背面にあった中朝両国の国旗が消えている新生柳京飯店でのステージショー
4月27日の11年ぶりとなった南北首脳会談で、1年前の金正男氏殺害事件やミサイル発射、6度目の核実験強行、秋以降の木造不審船の相次ぐ漂着などを考えると嘘のように情勢が一変した北朝鮮。
その様相は中国でも同様だ。中国が国連制裁の実施で今年1月9日に閉店したはずの丹東のある北朝鮮レストラン(以下、北レス)が復活を遂げていたのだ。
中朝を結ぶ鉄橋からもほど近い北レス「柳京飯店」が4月中旬に同じ場所、同じ店名で復活していることが確認できた。恒例のステージショーも開催されており連日観光客で満席になっているという。
丹東の北朝鮮事情通によると新しい運営会社は北朝鮮の資本がまったく入っていない中国企業。運営会社が切り替わったのは実は昨年11月末と中朝合弁企業廃止デッドライン前に間に合っていたことも分かった。他にも知らず知らずのうちに復活する北レスも出てくると丹東では噂になっている。
一方、同じくデッドライン最終日1月9日に営業を停止した瀋陽の元「七宝山ホテル」は、5月1日メーデー連休初日から「中富国際ホテル」と名称を変更して再オープンしている。オープン前のホテル前には、スタッフ募集の張り紙が貼られており、再オープン準備が着々と進んでいた。ここも北の資本がまったく入っていない中国企業が運営し従業員全員が中国人であると主張している。
内装はほぼ旧七宝山ホテルのまま使われると思われる中富国際ホテル
3階にあった北レス「玉流館」は消滅するが、以前にもお伝えした通り七宝山ホテル時代から入っていた北朝鮮のナショナルフラッグ「高麗航空」と、すべての日本人を担当する旅行会社「朝鮮国際旅行社」のオフィスは引き続きテナントとして入る見込みだ。北朝鮮色ゼロなはずの中国企業が運営するホテルに北朝鮮企業が入っていること自体、奇妙な印象を受ける。
しかも、オープン間近にもかかわらず現時点でも「シートリップ」や「エクスペディア」、「楽天トラベル」などメジャーなオンライン旅行サイトで同ホテルが確認できないのも不思議だ。
復活した丹東の柳京飯店や瀋陽の元七宝山ホテルが注目されるのは中朝合弁企業であることもあるが、これも繰り返し本サイトで取り上げているが、運営会社が、拘束された馬暁紅代表の「鴻祥集団」だからだ。(参照:
「北朝鮮の大同江ビール、中国へ独占輸入していた企業は北の核開発協力にも関与していた」)
馬氏らと同社はアメリカの独自制裁の対象となり、現時点でも馬氏の軟禁は解かれていない。柳京飯店やリニューアルする中富国際ホテルの新しい運営会社が鴻祥集団や北朝鮮とどのような関係にあるかは地元中国人でも分からないのが現実なのだ。
5月1日に再オープン予定の中富国際ホテルは4つ星ホテルにもかかわらず瀋陽のホテル業界では運営会社がどんな事業を行っているのかすらまったく知られておらず、中国語で検索すると今年1月末に「瀋陽中富国際酒店有限公司」が登録されていることが確認できるのみで謎に包まれている。