北朝鮮に核開発に必要な物質を輸入した中国企業が……
そんな大同江ビールを現在、北朝鮮以外で唯一飲むことができるのが中国だ。中国各地の北朝鮮レストランのメニューへ加わったのは、2014年ごろだろうか、最近の話だ。
あまり知られていないが、中国側の大同江ビール独占輸入権を持っているのが、昨年9月に北朝鮮へ核物質を密貿易した容疑で拘束されたと報じられた女性実業家の馬暁紅氏が率いる「遼寧鴻祥実業集団」が擁する「丹東鴻祥実業発展有限公司」だ。鴻祥集団は、大同江ビールの独占輸入権の他にも瀋陽で中朝合弁ホテル「七宝山飯店」や丹東の北朝鮮レストランなども経営しているなど同グループと北朝鮮との関わりは深い。
馬暁紅氏が表紙を飾る鴻祥集団のパンフレット
日本では馬氏が密貿易の容疑で拘束された以降については伝えられていないが、取材すると、いまだ拘束中と見られているという。しかし、大同江ビールは止まることなく輸入販売され続けていることから同グループはそのままビジネス継続が許されていることになる。
北朝鮮との貿易について紹介していた(現在は閉鎖)
その馬氏は、鴻祥集団が北朝鮮へ核物質を輸出しているとアメリカ政府から名指しで指摘されたので、アメリカの批判をかわすために何かしらで罰する必要があり、“アメリカの指摘に従い馬を拘束した”とアメリカへアピールしつつ、グループのビジネス自体は継続させているのではと同グループお膝元の丹東では噂されている。
「馬さんは、当局の取り調べに対して、『朝鮮から欲しいと言ってきたものを我々は売っただけだ。朝鮮がそれらを何に使用するかなど我々が知る由もない』と繰り返し主張したそうです」(丹東の貿易関係者)。
中国遼寧省を代表する美人経営者して注目された馬暁紅氏。果たして、大同江ビールを中国に独占輸入していた一方で、核開発に必要な物資を北朝鮮に流していたのか。今後の行方が注目される。
<取材・文/中野 鷹>
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID
@you_nakano2017