ボートと競輪の地区の違い/Sankakukei(CC by 4.0)
しかし、これが競輪の地区になるとまた変わる。
今度は道路がベースになる。選手はスタミナ練習の目的で、自転車で街道(ロード)練習をする。そのため、選手同士の交流は「道路」を基に築かれる。
たとえば神奈川県から多くの街道で繋がる静岡県(伊東温泉競輪場・静岡競輪場)は、競輪においては南関東地区と分類されるのだ。愛知県で最も東の豊橋競輪場よりも、小田原競輪場などに近い。
南関東地区となるのは東京の都市部を挟んだ千葉県までだ。しかし、肝心の東京都は関東地区となり、南関東地区とは別となる。むしろ関東地区として東京都は埼玉県や山梨県などへと繋がる。東京在住の選手から見て、首都圏の混雑する道路で繋がる千葉県・神奈川県よりも、多摩方面や埼玉方面の道路のほうが「練習しやすい」事情がある。
ほかにも、石川県は競輪とボートレースで地区が変わる。競輪では「富山競輪場」(富山県)~「岐阜競輪場」「大垣競輪場」(岐阜県)へと道路的に繋がり、中部地区の分類だ。石川県は道路で見ると「福井競輪場」(福井県・近畿地区)にも近いが、能登など石川県の大半の地域は富山県のほうが道路的には移動しやすい。だが、ボートレースでは鉄道で最寄りとなるボートレース場が福井県の「ボートレース三国」になるため近畿地区となる。
日本の物流や交通事情を独自に体感する機会は普段でもある。
たとえば宅配便などを利用した際、「最短の配達可能日時」が送り先によって変化することで道路事情を感じたりできるし、最近ならゴールデンウィークで帰省や旅行をすれば公共交通機関を利用して目的地までの利便性を知ることもあろう。
こういった経験が、実は競輪やボートレースを楽しむうえでちょっとしたヒントになることもある。
「八地方区分」でも地区の端から端になると距離があるように、同じ地区だからといって選手同士必ず面識があったり交流が深いというわけではない。ただ、少し遠そうでも道路事情や交通事情を知っていると、「この選手同士は交流がありそうだ」といったような推測(妄想?)をすることができる。
特に競輪の場合は(風圧への対応から)選手の連携があり、最高速度やダッシュ力、持続力、最近の調子を連携する地区の仲間同士で理解しているかしていないかが作戦の成功可否に関わってくる。近ければ他県であっても交流のチャンスは多く、交流が多ければ、タイプや性格などをお互い理解している可能性も高くなる。
ネットが発達し、どんなに遠くても連絡が取れる現代だが、移動やモノ、対面の交流に関してはまだまだ我々は鉄道や航空、道路に頼って生きている。日々公営ギャンブルに触れる筆者も、間接的にそれを実感しながらレースを楽しんでいるのだ。
【シグナルRight(佐藤永記)】
半勤半賭のセミギャンブラー。Twitterやニコ生『公営競技大学』にて公営競技について解説をしている。
@signalright
公営競技ライター・生主。シグナルRightの名前で公営競技の解説配信活動「
公営競技大学」を個人運営している。また、日刊SPA!のギャンブルコーナー勝SPA!編集担当も。Twitter:
@signalright