続いてはイギリスのメディアによる報道。
『ガーディアン』は「日本の#MeToo」と見出しにつけ、伊藤詩織さんを例に挙げている。
「日本における#MeToo運動の牽引力は鈍く、被害者は声を上げることに消極的だ。しかし、昨年ジャーナリストの伊藤詩織が、安倍晋三と近しいテレビジャーナリストにレイプされたと主張し始めてからは、公権力のセクハラ疑惑や暴力への対応についての批判が高まっている。警察は突然捜査を打ち切り、現在伊藤は民事裁判で犯人とされる山口敬之を訴えている」
『
BBC』は「政権を守る」という中見出しで、セクハラは認めないが業務に支障が出るという福田事務次官の辞任の理由を説明。森友問題で財務省が混乱していることにも言及している。また、「静かな苦しみ」という中見出しで、4月18日に
日本新聞労働組合が出した声明を引用した。
「職場で女性を増やそうとする努力とは裏腹に、日本の政界や企業には大きなジェンダーギャップがある。福田氏の辞任の前には日本新聞労働組合が職場での女性保護についての声明を出した」
以下は同記事内で引用されている声明の一部分だ。
「多くの女性記者は、取材先と自社との関係悪化を恐れ、セクハラ発言を受け流したり、腰や肩に回された手を黙って本人の膝に戻したりすることを余儀なくされてきた。屈辱的で悔しい思いをしながら、声を上げられず我慢を強いられてきた。こうした状況は、もう終わりにしなければならない」
メディアだけでなく、一般人からもセクハラ疑惑に対しては怒りの声が上がっている。
「セクハラや男女平等に関して、日本はかなり遅れていると思う。例えばレストランのメニューでもサラダに『女性にオススメ』とか当たり前のように書いているけど、欧米ではありえない。お酒の席でも女性を触ろうとする男性を何度も止めたことがあります。もちろん、どこの国も完璧ではありません。だから#MeToo運動が起きている。だけど、今日本で起きているようなことはアメリカではそんなことは信じられないと笑われていますよ。
(福田事務次官の)『言葉遊び』というのはトランプ大統領が『(女性の)アソコを掴む』と言ったときに『ロッカールームの会話みたいなもんだ』と言い訳したのに似ていますね。保守陣営は魔女狩りだと騒ぐでしょうが、こういった話が広く議論されるようになったのはいいことだと思います」(アメリカ人・男性・37歳)
「女性がどういう扱いを受けているか話されるようになったのはいいことです。日本はとても性差別的な国。人々がそれに気づき始めてよかった」(ノルウェー人・女性・32歳)
また、日本語文化に問題があるのではないかという指摘もある。
「ハッキリ『NO=嫌だ』と言えないのではないかと思います。『やめてください』とか、柔らかな表現が多いところにも文化が表れているのではないでしょうか」(アメリカ人・男性・35歳)
東京五輪が2年後に迫っている日本。3月には同月の訪日外客数が260万3000人と過去最高の数を記録するなど、グローバルな視点が向けられているのは喜ばしいことだ。そんななか、「女性との“言葉遊び”はセクハラかどうか?」という時代遅れの議論がされている現状は世界基準から大きく離れている。「美しき国」を自称する国が、諸外国に指摘されるまでこの問題を放置しておいていいものだろうか?
<文・翻訳/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン