生ハム生産で知られる「インカルロプサ」、中国企業が買収を検討
事実、インカルロプサ社はメルカドナからの反応を気にかけているのか、会社の売却について否定している。そして、公式見解として「我が社に関心があるという案件については聞く姿勢を持っている。また我が社に関心を示してくれていることに誇りを感じている」という差し障りのない考えを表明しているだけだ。
何しろ、この買収の件が要因となってメルカドナがインカルロプサ社からの仕入れを中止するような事態になれば、同社は一気に倒産するのは目に見えているのである。(参照:「Las Provinicias」、「Libre Mercado」)
このメルカドナとインカルロプサの強固過ぎる繋がりは、Kam Fung Groupサイドにも買収への障壁になっている。この買収に必要な資金を銀行から借りるにも銀行がそれを渋っているというのだが、その理由が「インカルロプサ社の顧客が1社だけに依存している比率が高過ぎるからである」と、『elEconomista.es』は指摘している。
とはいえ、インカルロプサ社も中国系企業との関係強化を完全に否定できない背景もある。先述したように、メルカドナへの依存度が高過ぎるということを充分に承知しているのか、インカルロプサ社はこの先4年間で生産量を75%増やしてその販売先をアジアに向けようとしているのだ。
その為のプランとして9700万ユーロ(126億円)を投入して設備の拡大を図ることを予定しているそうだ。またそれを容易にする為に欧州投資銀行(EIF)から3500万ユーロ(45億5000万円)の融資を申請していることも明らかにしている。
なお、同社は2億ユーロ(260億円)の負債も抱えているという。(参照:「El Pais」、「Expansion」)
今後の動きが注目される。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
それでも中国企業とのつながりも必要な理由
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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