MOMOのような観測ロケットは、もちろんISTにとって最終目標ではない。同社は次のステップとして、超小型衛星(1kg~数十kgほどの衛星)を打ち上げられるロケットの開発を目指している。このロケットは「ZERO」というコードネームで呼ばれており、2016年から基礎開発が始まっている。
MOMOをはじめ、ISTのロケットはシンプルかつ枯れた技術を採用し、また民生品を多く活用するなどして、低コスト化を徹底している。ZEROでもその方針は踏襲され、超小型衛星を今よりも安く、手軽に、そして自由に打ち上げることを目指している。
ただ、超小型衛星を打ち上げることに特化した”超小型ロケット”は、近年、世界中で活発に開発が進んでおり、競争が起こっている。今年1月には、米国企業のロケット・ラボ(Rocket Lab)が開発したロケットが打ち上げに成功し、この開発競争の中で先手を打った。この他にも、今年中に初打ち上げを計画している企業がいくつもあり、その中でISTはやや遅れを取っている。
とはいえ、超小型衛星の需要はこれから大きく伸びると期待されており、それにともなって打ち上げ手段であるロケットの需要も大きく伸びるだろう。そうなればとても数社ではさばききれず、また競争を発生させる意味でも、多くの企業が入り乱れることが予想される。つまりISTに勝機はまだある。
もちろん、そこにたどり着くまでには多くの関門がある。技術面はもとより、資金調達や人材面が課題だということは、同社も認めている。それでも歩みを止めないのは、宇宙には夢があるから――ではなく、ビジネスとして可能性があるから、そしてZEROのようなロケットによって超小型衛星が手軽に打ち上げられるようになれば、その可能性はさらに広がるからだろう。
同社が衛星打ち上げに向けて駒を進めるためにも、そして宇宙開発と宇宙ビジネスの未来を拓く一社になるためにも、4月28日のMOMO 2号機の打ち上げ実験はとても重要なものになる。
ISTが開発中の衛星打ち上げロケット「ZERO」の想像図 Image Credit: インターステラテクノロジズ
<文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行っている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・観測ロケット「MOMO」2号機の打上げ実験実施について | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(
http://www.istellartech.com/archives/1372)
・観測ロケット「MOMO」2号機機体公開及び打上日に関する記者会見 – YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=P_2VvpGrGVo)
・2017年MOMO初号機打上げ報告書(
http://www.istellartech.com/7hbym/wp-content/uploads/2017/08/730c920aa896dec195566c51ed62145b-1.pdf)
・IST サウンディングロケット「モモ」ユーザーズガイド(
http://www.istellartech.com/7hbym/wp-content/themes/ist/img/technology/MOMOUsersguidever.0.2.pdf)
・「今度こそ宇宙へ!」MOMO2打ち上げ応援 | 日本旅行sola旅クラブ| 国内旅行・国内ツアーは日本旅行(
http://www.nta.co.jp/theme/space/momo2/)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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