公文書改ざんの重みと、国家の重みが理解できない安倍首相――福島のぶゆき×菅野完対談(後編)

公文書改ざんの重みと、国家の重みが理解できない安倍首相

福島:しかし今もよく、森友学園問題ばかりを国会でやるな、もっと大事なことはあるじゃないかという話が出ますが、まったくもってその通りだと思います。こんなこと、一週間で終わりにしなければいけない話なのに、もう一年もやっている。 菅野:去年の2月の答弁の前段階で、福島さんが総理に質問で水を向けて、「騙されているんじゃないんですか」と言ったとき、「そうなんですよ変な男に絡まれまして。見てください、この決裁文書、こんなふうになっちゃったんですよ」と答えていたら、あの日の予算委員会一日で終わっていましたよね。 福島:その通りです。少なくとも2月の間にこの問題は終わっていました。改ざんも生じなかったし、職員が亡くなるなどという痛ましいことは絶対起きなかった。でも、おそらく最初の答弁で総理は、(籠池さんは)私のことをよく理解している、などと言っていましたから、安倍総理あるいは夫妻にあの学校をつくろうとする意思はやはり多少はあったと思うのです。素直に謝れなかったわけです。 私が言ったことに対して、私や妻が関わっていたら総理も議員も辞めます、一切関わりがありませんとムキになって言わざるを得ない何か、心の中の呵責があったわけでしょう。 菅野:私も傍聴席から何度も予算委員会見たことありますが、野党の先生と閣僚席はそんな離れていないじゃないですか。テレビで見るよりもすごく近い。息遣いがわかるほどです。あの瞬間、あの答弁が出た瞬間の安倍さんは、如実に興奮していた感じだったのですか? 福島:はい。それは興奮していました。 菅野:顔色が変わるくらい? 福島:そうですね。そこはあまり申し上げたくないですけれど、ご夫婦2人のいろいろなものがあるのかなと思いました。とにかく奥様の話を出すとすぐキレてしまう。 菅野:それは他の先生からの質問でもそうですよね。安倍さんは、安倍昭恵さんと言われると顔色が変わる。福島さんは短い期間ながら、安倍首相のそばではたらいていましたが、安倍さんが小泉政権で内閣官房副長官をしていたころを思い出すと、安倍さんはどんな人だったのでしょうか。 福島:すごくいい人だと思いますよ。自民党が野党時代も、安倍さんと一緒に勉強会もしていましたし。 菅野:その時は、福島さんは与党議員としてですか。 福島:そうです。安倍さんの周りに誰もいなくなって離れていったときに、それこそ櫻井よしこさんや藤原まさひこさんと一緒に勉強会をしていました。 菅野:福島さん、極右じゃないですか(笑) 福島:だから日本会議のメンバーだと言ったじゃないですか(笑) そういう勉強会を一緒にしていましたが、安倍さんは本当に優しくていい人でした。ヒットラーのような男だと思う人もいるかもしれないけど、一言で言ったら坊っちゃんです。安倍さんと友達になって、彼を嫌なやつだと思う人はいないと思います。ただ、何かが決定的に欠けているのでしょう、総理大臣としての何かが。おそらく国家を背負う重さをまったく自覚していないまま、でも本人は国家を背負っている気になっているという…… 菅野:それは悲劇ですね。 福島:だから改ざんなんて、彼は何とも思わないと思うんです。その重さを実感していないのではないでしょうか。それこそ、昔の古事記や日本書紀もある意味役所が作った文書ですが、国家とはそういうのの積み重ねであり、総理大臣をその期間やるというのはそうした書類の積み重ねを行う存在であり、それを改ざんしてはいけないのだということが、安倍さんは皮膚感覚としてわからないのだと思います。 ゲームで育ったすべてがバーチャルな世代と一緒ですよね。だから、ネット右翼と安倍さんは非常に似ているところがある。 菅野:リアリティがない? 福島:はい。安倍さんは口ではよく言いますが、国を愛することがどういうことか、命を賭けて国を愛するということの本当の意味がわからないまま、国を背負っているつもりになっているのではないでしょうか。 菅野:行政文書の積み重ねが国家だとして、その国家という抽象的な概念を確かに具現化すると、紙でしかないんですよね? 福島:そうです。それがなかったら日本なんて存在しない。この国自体がないのです。これまでもTPPの議論のときの黒塗りの資料だとか、南スーダンのPKOの改ざんとか、その手の話があまりに多すぎる。だから私はTPPの交渉記録が残っていないとなったとき、「日本はいつからインカ帝国になったんだ」と国会で言ったのです。だからこの国は、もし戦争に負けたら歴史は何も残らないのです。国家自体なかったことになってしまうかもしれない。ムー大陸のようになってしまうかもしれない。 菅野:そうですよね。まさに今回発表された改ざん文書の中には、平成26年には交渉が一切なかったことになっているわけですからね。 福島:そういうことをしている人たちが、なぜ保守を名乗るのか? 文書を大事にして、歴史を紡いでいくのが保守のあり方だと私は思います。
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国会答弁には政治家が責任を取れ
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