コスタリカ大統領選の「子ども投票」が盛り上がるワケ

“子ども向け政見放送”で公約を発表する大統領候補たち

 もちろん、子どもたちの投票は本番の得票数にはカウントされない。にもかかわらず、候補者たちの子どもたちに対するキャンペーンは真剣そのものだ。各政党の大統領候補者たちが子どもたちへの公約を語る“政見放送”の映像もYouTubeにアップロードされており、その本気度がうかがえる。  それを観てみると、公約の内容もバラエティに富んでいておもしろい。「学校の質を上げます」「みなさんの安全を守ります」といった通り一遍のものから、「お母さんやお父さんたちのテレワークを増やし、子どもたちとの時間を増やします」とか、「みんなで遊べる公園を増やします」、(飼い犬とじゃれながら)「子どもたちと動物たちに優しい世界にします」、果ては「宿題や課外授業をなくします」などといったちょっと過激(?)な公約まで、実にさまざまだ。  子どもたちとの公な約束という意味ではどれもれっきとした「公約」であり、決して遊びではない。当選したら、彼らは大人として自分が口にしたことを実施する責任がある。子どもたちもそれを知っているから、候補者たちが語る言葉を聞き、真剣に検討するのだ。

子どもの投票が“本番”の選挙にも影響

投票する少女

国立子ども博物館で投票する少女。年齢に下限はない

 地元紙によれば、「子ども投票で優位に立った候補が決選投票でも勝つ」という“法則”があるという。コスタリカの大統領選は、第一回目の投票で有効投票数の40%を超える得票者がいなければ、上位2人の決選投票となる。今回も当初から決選投票にもつれ込むことが予想されていた。だから、どの候補者も、子ども投票で自分に投票するよう、子どもたちにとって魅力的な政策を直接真剣に訴えかけていたのだ。  もちろん、それだけではない。子どもたちが投票するとなると、家族でも誰に投票するか、どんな政策がいいかなど、政治的なテーマが話題に上る。それが“本番”の選挙に少なからぬ影響を及ぼす。子どもたちの投票行動が、実際の政治や選挙に結びついているからこそ、大人たちも真剣に子ども投票を後押しするのだ。
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お祭り騒ぎで民主主義強化
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