日本人の”マスク愛”の根源は何なのか? その周辺にある感情を探ってみた

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 患者数が累計1千万人を突破するほど流行した今冬のインフルエンザ。ようやく峠を越えたかと思えば、間髪入れずに大量の花粉が春風に踊る。  そこへ偏西風に乗った黄砂やPM2.5がやって来れば、もはや今出たくしゃみが何のせいなのかも分からなくなってくる。  そうなるとやはり手放せなくなるのが、マスクだ。  日本衛生材料工業連合会によると、一昨年度の家庭用・医療用・産業用を合わせたマスク生産数量(国内生産・輸入数量)は、49憶枚超。そのうち、家庭用マスクの割合は約38億枚と、全体の約78%にもなる。が、日本人がマスクをする理由は、こうした本来の「ウィルス・花粉・粉塵症対策」によるものだけではない。マスクを「顔を隠すためのアイテム」として使用する、いわゆる「伊達マスク」にこそ、その真意がある。  インターワイヤード株式会社が運営するDIMSDRIVEが2015年に行ったモニターアンケート調査によると、伊達マスクを使用する割合は、全体の20%超。20代女性においては44.9%にもなる。「スッピンを隠すため」、「表情を作るのが面倒くさい」、「何となく落ち着くから」というのが彼らの言い分だ。  顔半分覆ったくらいで「スッピンを隠した」と言える彼女らに、「そんな時代なんざすぐ終わるぞ」と、眉間や目尻のシワ寄せ合わせて諭してやりたいところだが、「w」の1字で笑ったことにできる現代のネット社会の中で、その若い表情筋を持て余せば、シワ寄るどころか口角すら上がらない。  こうして顏面での感情表現が素直にできなくなると、当然、対面での人間関係の構築も困難になり、結果、深刻な対人恐怖症やマスク依存症に陥ることもある。  そんな中、これも時世なのか、最近では「マスク姿のほうが異性に魅力を感じる」とする声もあるという。  マッチアラーム株式会社が2014年に実施したアンケート結果によると、実に45%もの男性が「異性のマスク姿は魅力をアップさせるか」の問いに、「はい」と回答。理由には、「顔全てが見えないことでどんな顔か想像してしまう」、「目が強調されるから」という意見が並ぶ。  一方の女性も、25%がマスク姿の異性に魅力があると回答。男性と大差ない理由に加え、「マスクをしてまで仕事を頑張っているように見える」という声が上がるのには、多角的に複雑な気持ちになるも、マスク姿限定で行われる合コンやお見合いパーティが、毎度大好評であることに鑑みると、日本人の「マスク愛」の深さを痛感すると同時に、「どうりでマスクが38億枚も生産されるわけだ」と妙に納得できてしまう。  こうして「恋人・結婚相手探し」にまで活躍の場を広げる日本のマスクは、いわずもがな「白」が一般的だが、2015年に北海道大学で行われた研究によると、「元々持ち合わせている顔の魅力度」に関係なく、白マスクよりもよりも「ピンク色」のマスクをしている女性の方が、最大で105%魅力的に感じるという結果が出たという。  つまるところ、単純に考えると「マスク無しよりも白マスク」、「白マスクよりもピンク色のマスク」のほうが女性の魅力は増すと考える男性がいる、というわけだ。  以前、日本人とアメリカ人の「ピンク色に対する感覚の違い」について言及したことがあったが(参照:『なぜアメリカ人は真っ青なケーキを平気で食べるのか? その理由がほぼ判明』)、こうした結果を見るたびに、筆者はつくづく「実は日本では、女性よりも男性の方が“ピンク好き”なんだろうな」と思うに至るのだ。
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急速に浸透しはじめた黒マスク
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