オクケン / PIXTA(ピクスタ)
2月16日からの春節(旧正月)連休では多くの中国人スキーヤーが日本を訪れた。スキー・スノボードを目的とした訪日がここ2、3年で激増している。その背景には中国政府の国策による「スキーヤー5000万人作戦」が影響している。
今冬は平昌冬季オリンピック・パラリンピックもありウィンタースポーツが注目されたり、14年ぶりの新スキー場として峰山高原(兵庫県)がオープンしたことなども話題となっている。
日本のスキー・スノボード人口は、バブル期のスキーブーム後の1993年の1860万人をピークに減少し始め2000年以降は減少を加速させ2016年には580万人とピーク時の3分の1以下になっている。当然ながらスキー場も減少しており、1985年には全国1669か所のスキー場があったのが、2015年には718か所に減っている(出典『レジャー白書2017』)。
一方、中国でスキーを含めレジャー一般が市民へ定着し始めたのは、経済成長し中間層が増え始めた2000年代になってからと歴史は浅い。そんな中、スキー・スノーボードについては2010年代になってから愛好家が急増しているのだ。
中国国家体育総局の発表によると、2016年スキー・スノーボード人口は1510万人(前年比20.8%増)、スキー場は646か所と日本のピーク時に迫る規模にまで成長している。中国で雪が降るのは北京以北くらいなので、スキー施設は、北京や東北3省が中心で、他に内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区にでき始めているくらいで中国の3分の2くらいの地域の人はまるで縁がないため名前は知っているが、興味はなくレジャーにカウントされていない状態だ。
春節翌日2月17日に大連から70人のツアーが訪日した。目的は、長野の志賀高原でのスキーだ。大連の旅行会社1社だけで2月は300人ほどがスキーツアーで訪日したという。
以前お伝えした通り、中国から日本への団体旅行は昨年10月に3か月間規制されていた(参照:『
中国訪日団体ツアーが事実上禁止に。行けなくなった中国人60万人の振替先は?』)が、期限少し前の12月末には解除されてツアー販売が可能となり、春節連休に間に合ったと旅行会社の許代表は胸をなでおろした。
話を聞くと、どうもこの旅行会社のリピーターや中国のスキーヤーは志賀高原が特にお好きらしい。「一番の理由は雪質です。パウダースノーに感動する人は多く1シーズンでリピートする人もいるくらいです。アクセスのよさもあります。東京からの移動が便利なことです。あとは、寒すぎずスポーツにちょうどいい気候が志賀高原が人気の理由です」(許代表)
近年、日本以上の巨大スキーリゾートが次々と吉林省や黒竜江省に誕生しているがあまり評判はよくない。その訳は、中国東北は北海道より緯度が高い寒冷地であるが、豪雪地帯ではないため、雪はそれほど積もらない。そのため足りない雪は人工雪で補っている。結果として天然雪と人工雪が混ざりパウダースノーにはならないらしい。寒すぎてマイナス30度の世界だとスポーツを楽しめる環境ではないという声も聞こえてくる。
吉林省長春出身50代の許代表は、中国ではスキーをしたことなかったそうだ。
「私が育った70、80年代はウィンタースポーツなんて感覚はなく、凍った池でスケートをしたり、雪ゾリをする程度でした。2010年代になってからツアーアテンドで宮城や北海道へ行くようになりスキーと出会いハマリ、各地のスキー場を巡って実際に滑り志賀高原や岩手の安比高原、北海道の富良野、ニセコがいいと思ったのでお客さんへお勧めしているのですが、やはり志賀高原がダントツ人気なんです」(同)
記者はこの記事を書くために許代表と会ってお話を聞いていた1時間足らずの時間にも許代表のスマートフォンのチャットアプリ「WeChat」へ7、8件のメッセージやコールが入っていた。てっきりアテンドしている訪日中の人たちからと思ったら、実はまったくの新規のお客さんからの問い合わせだった。