私は、トヨタグループ・関連企業の役員・管理職向けのトレーニングプログラムのトレーナーをしています。その研修は、トヨタ自動車株式会社の役員から、小規模な関連企業のたたき上げの社長まで、一同に会して、演習をしています。有名大学を卒業した人もいれば、大学を出ていない人もいます。
演習する内容は、相手の意欲が高まる要素を見極めて課題を解決しようとするものだったり、質問によって合意形成しようとするものだったり、さまざまです。スマホで自撮りしながら、ロールプレインをしてビデオを自分で確認してスキルを磨いていきます。
演習でのパフォーマンスが高いのは、有名大学を卒業した人とは限りません。大学を卒業していない人が、しかし、日頃のいわば泥臭いビジネス経験をふまえて、とても味のある話法や対応を発揮してくださることが頻繁にあります。
パフォーマンスを発揮できるかどうかは、これまで自分が取り組んできたことがない演習に対しても、チャレンジして、訓練しようとするかどうかということに尽きるのです。まさに田村淳さんは、あくなきチャレンジ精神で、大学受験というものに取り組んでいるのです。
大学を卒業していようといまいが、何か資格を持っていようといまいが、チャレンジしたり、訓練したりすることをやめてしまえば、そこで成長は止まります。ひとつの仕事や役目を担って、それ以外はやらないと決めてしまったら、仕事や役目の広がりはないわけです。
タレントとして大成功した田村淳さんが、不得意分野であろう大学受験にいまさらながらチャレンジする…スラッシュビジネスパーソンのモデルを体現しているのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第75回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。