私は、Aさんへの営業は比較的やりやすいと判断いたしました。一般的に、返信があまり来ない顧客との愛人成約率が10%としましたら、LINEに熱心な男性との成約率は60~70%までハネ上がります。心理的な距離の近さを維持しやすいからです。
AさんからのLINEには、1度しかお会いしていないにもかかわらず、恋人同士のようなキーワードが目立つようになりました。
「次のデートが待ちきれない」ですとか、「才子さんとの夜が楽しみで仕方ないよ」「好きだよ」。はては2度目の顧客訪問(デート)が終わって以降、「愛してる」という恐ろしいワードを多用するようになったのでございます。
これでは失策です。テレビ東京系列で昨年秋に放送されていたドラマ「フリンジマン」でもいわれておりましたが、愛人関係に「愛してる」は禁物。愛には「無償の」という言葉がつきまとうからです(「好き」には「無償の」が似合わないのとは対照的です)。
愛人関係はビジネスですから、当人同士が愛し、愛されたいと願ってはいけません。
ところが、LINEのスピード感によって気持ち(愛)が高ぶった顧客にしてみれば、自分は無償の愛を提供しているのだから、私にも無償で時間や身体、精神的なケアを提供しろということになります。
私が求めているのは愛人であって、愛ではないのですが、LINEというツールはそこを勘違いさせてしまう魔力をもっているのです。
LINEで「愛してる」を多用する男性は、50%以上の確率で金銭を出し渋るようになります。
「僕は心から君を愛しているのに、どうして~~してくれないの?」という不満が頻発し、金銭的なやり取りなしにサービスを享受しようとするクレーマーに変貌します。
短期間で「愛してる」を連発するようになったAさんへの営業は、失敗に終わりました。
<文・東條才子>