風の強い寒い日だったが、東中野駅を行き交う人たちはシールアンケートの呼びかけに応じてシールを貼っていた
そこで「桜並木を守る会・サポーターグループ」が中心となり、JR東中野駅前で道行く人々を対象にシールアンケートを実施。駅利用者の関心は高く、200人以上から以下のような回答を得た。
●平和の森公園の樹木伐採について
知っているか……「知っている」103人、「知らない」89人
伐採への賛否……「賛成」5人、「反対」237人
●東中野駅前の桜並木伐採について
知っているか……「知っている」67人、「知らない」92人
伐採への賛否……「賛成」1人、「反対」198人。
東中野駅前アンケートの際、住民が書いたメッセージ。「東中野の桜は住民のこころです」「切らないで! だめ!」といったものや、中には「区長には次回投票しない」といった意味のものも見受けられた
シールアンケートを行ったメンバーは、「多くの方にシールを貼っていただき、『頑張ってください』『応援します』という声も多数いただきました。途中でシールが足りなくなって買いに走ったほど。シールアンケートの結果は明白です。中野区は、この声を真摯に聞くべきです」と語る。
今回の整備計画に対して、住民たちはただ反対しているわけではない。平和の森公園の樹木を移植することや、バーベキューサイトやコンクリート製すべり台の建設中止などを提案しており、何よりも中野区との話し合いを要求している。
中野区役所・都市基盤部の公園整備担当に問い合せたところ、「平和の森公園の再整備については、『暗くて危険』『道路へ枝がはみ出していて危険』という課題解決のためもあって行っている。区民からの反対意見があることは知っているが、すでに必要な手続きを経て決定されたもの」と回答した。住民の声に耳を傾ける予定はなさそうだ。
昨年11月、「守る会」は工事の中止を求めて住民監査請求を申し立てた。しかし今年1月に「違法・不当な措置、決定とは認められず、請求には理由がない」として却下されたため、現在は住民訴訟の準備を始めている。
2年半にわたるシニア層の住民運動に、若者たちも加勢
手づくりのプラカードを手に、平和の森公園前に集まる住民たち。若者たちの姿も見られる。背後の白いパネルが公園全体を囲み、中の様子は見えなくなった
平和の森公園の再開発が発表されたのは2015年4月。地域住民たちの動きは速く、2か月後の6月には「守る会」を発足させていた。当初、中野区は野球場の拡幅のための伐採本数は226本と説明していたが、住民らが情報公開請求をしてみると1万7787本であることが判明した。
「守る会」では1万筆を超える署名を厚め、1600人余りの住民アンケート、400人を超える集会やデモ行進、勉強会、トーク会、ニュースレターの発行、100万円を集めた募金活動のほか、議会の傍聴や都議会議員への働きかけなど、さまざまな活動を行ってきた。
メンバーの中心は現役を退いたシニア層。そこに昨年から若いメンバーが加わってTwitterで投稿を行うと、しだいに若い層も加わるようになった。
インターネットを使った電子署名(change.org)を呼びかけたところ、4645人の賛同が集まっている(3月5日現在/今も継続中)。
さらに記者会見を開くと、市民メディアのほか大手新聞社も取材に訪れた。すでに伐採は始まっているが、「1本でも守りたい」という住民の熱意は衰えるどころか、ますます大きな広がりを見せている。
<取材・文・撮影/中山貴久子>