スペインの人気番組が報じた豚肉加工食品の原材料への疑いが大問題に! 腫瘍の豚も原料に!?
E社の怒りは収まらなかった。同社は撮影が行われた養豚場に対し、誤解を招く報道を許したとして契約を解消した。そして、映像で映し出された病気の豚の肉は生産ラインに乗せられることは絶対にないということを新ためて発表した。更に、彼らは食品の衛生安全規準に基づて厳密なる検査を実施していることも付け加えた。
「一般倫理及びスペインの牧畜業界における職業倫理という観点から、牧畜業者は肉体的欠陥をもったいかなる飼育動物に関して健康を取り戻させることが義務づけられている」とE.P.社の広報は述べ、更に、「最終的に回復しない豚は認定された検査官の管理のもとで現行の規定に基づいて、豚が生存していた養豚場内にて畜殺されることになっている」と言及した。(参照:「Libre Mercado」)
スペイン政府のイサベル・テヘリナ農林水産大臣もその後、別のテレビ番組に出演してE社を始めスペインの豚肉加工食品の生産業者は厳しい保健衛生管理のもとに生産されており、世界のリーダー国のひとつだといった説明をした。奇妙なことに、彼女は問題の番組は見ていないとインタビューで認めた上で、スペインの同業界の生産管理を称えたのであった。(参照:「El Periodico」)
ジョルディ・エボレは、原材料として使用されるべきでない豚肉が生産ラインに乗せられている可能性があることをテレビで報じることを目的に番組を制作した。ところが、事態は彼が予期した以上に大きな問題を引き起こすことになった。
その映像を見たベルギーのスーパー2社、ColruytとDelhaizeそしてドイツの1社ReweがE社からの仕入れを一時的に中断することを決めたのである。そして、店内の棚に陳列していた同社の商品も一斉に撤収したという。(参照:「Caso Aislado」)
Colruytは1925年創業のスーパーで、ベルギー、フランス、ルクセンブルグ、オランダで店舗展開しており、E社からは1品目を仕入れている。一方のDelhaizeは8品目を同メーカーから買い付けている。
「サルバドス」は、E社の不正を暴くべく、報道をした。しかし、影響は大きく、スペインの他の加工肉食品メーカーへの外国からの信頼も傷つけられる結果になってしまったのだ。
スペイン国内でも「サルバドス」の報道に対する反応はまちまちである。
例えば、<今日見た番組から菜食主義者にならざるを得ない>という回答や、<これからはエコロジーの肉を食べるようにする>といったツイートが現れたのは予想通りの結果だろう。
その一方で、同じく養豚場を経営している別の家族は、<僅か1カ所の養豚場を見ただけで、スペインの養豚場の全てを総括して結論を出そうとするのは正しい行為ではない>というツイートもあった。(参照:「Publico」)
「サルバドス」側も、確証を掴んでいない段階で、一つの養豚場の潜入取材だけでセンセーショナルに報じたのは浅薄だったかもしれない。しかし、生産上で何らかの不正が行われている可能性もまだ否定できない状態である。
そんな中、この番組は視聴率が高く、スペインの多くの消費者に肉加工食品などの商品について再考を促すようになったのは間違いないだろう。
いまのところ、スペイン国内では消費者の間で不買運動は起きてはいない。ちなみに、E社の商品は日本市場にも僅かの量ではあるが輸出されていることも言及しておく。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
国外のスーパーが仕入れを拒否する事態に。世論も真っ二つ
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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