モノ言う投資家に便乗して儲ける方法
2018.03.05
投資ファンドのスパークス・アセット・マネジメントに大幅増配を要求された帝国繊維株が急騰した。昨今、モノ言う投資家の動きが本格化している。その背景と便乗する方法を聞いた。
モノ言う投資家による株主提案を材料に株価が急騰するケースが相次いでいる。「昨今、投資ファンドの発言力が増し、企業がファンド側の要求に応じる公算が高まっている」と、株式評論家の大神田貴文氏は話す。ファンドの圧力を象徴するのが帝国繊維だ。
「1月、投資ファンドのスパークス・アセット・マネジメントが帝国繊維に『3月の株主総会で、現在の配当30円から1株当たり60円の増配と取締役の任期短縮を要求する』と発表しました。すると、翌営業日には株価は一時6.5%高と急騰したのです。株主提案といえば、欧米のハゲタカファンドなどのような強引な手法が連想されがちですが、最近の事例では、ごく紳士的です」
スパークスが帝国繊維株を取得したのは4年前。スパークスの執行役員としてファンドを運用する服部英明氏は、「経営陣の手腕と事業の収益性の高さに着目して投資しました。倒産寸前だった帝国繊維を10年かけて再建し、消防・防災用品の優良企業に育てた経営陣の力量を高く評価しています」と話し、帝国繊維側と対立している印象はまったくない。
「ただ、帝国繊維はシナジー効果の薄い不動産投資会社のヒューリック株を保有していたり、多額の現金を持っています。経営が上向くにつれてキャッシュが貯まるのは大歓迎ですが、それが成長投資に使われるわけでもなく、株主に還元されるわけでもないのは、投資ファンドとしては問題視していたようなのです」(大神田氏)
実際、服部氏は次のように話す。
「ただ内部留保が積み上がっていくだけの状態に疑問を持ちました。当初は会社側に要望を伝えようにも面会さえ拒否され、ようやく面談が実現しても話し合いがまとまる様子がないので、株主提案という形を採りました」
一方、帝国繊維側は’17年12月期末配当を前期より10円多い40円に増やすと発表。
「スパークスの求める90円配当には届きませんが、一定の譲歩を見せた形です。しかし、帝国繊維の白岩強社長は『顧客の信用を得るため、強固な経営基盤が必要』として、大幅増配を求めるスパークスの株主提案に反対する考えを示していて、両者の主張はすれ違ったままです」(大神田氏)
ほかのファンド関係者からは、「帝国繊維が配当の積み増しを発表するのが、穏便な妥協策になるだろう」(国内中堅証券)、「外部株主の声に振り回されたくないなら、帝国繊維はMBO(経営陣による買収)で自ら上場廃止を選ぶ道もある」(外資系証券)との声も聞こえる。今後、3月の株主総会に向けて、スパークスと帝国繊維経営陣の神経戦が展開されそうだ。
大幅増配など株主還元を続々と要求
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