大神田氏は、「投資ファンドの動きが本格化し、株主提案が増えている背景には2つの理由がある」と指摘する。
「一つは、金融庁が昨年改定したスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動原則)です。
機関投資家には企業に株主還元強化を要求する義務があると定めており、利益剰余金が豊富な企業や無借金の企業は増配などの株主還元をしないと、運用会社から強く批判されかねません。それが今、起きつつあるのです」
そして二つ目の理由として、低コストのインデックス系投信やETFの台頭だ。
「’17年の投信のパフォーマンスランキングを見ると、スパークスなどの投資ファンドが得意とするアクティブファンドが上位を占めています。しかし、好調な株式市場を受け、低コストのインデックス系投信やETFに押され気味なのです。そのため、
投資ファンドも高コストに見合った成績を出し続けないと、顧客が離れていく恐れがあるという事情も垣間見えます」(大神田氏)
《’17年、パフォーマンスがよかった投資信託ランキング》
ファンド名(運用会社)/リターン
1位 JPMジャパン・テクノロジー・ファンド(JPモルガンAM)/105.70%
2位 小型株ファンド(明治安田AM)/96.18%
3位 日興グローイング・ベンチャーファンド(日興AM)/95.94%
4位 SBI小型株成長株ファンド(SBIAM)/93.64%
5位 女性活躍応援ファンド(大和投信)/73.18%
6位 日興USB中国A株ファンド(日興AM)/70.60%
7位 ダイワ新興企業株ファンド(大和投信)/67.62%
8位 SBI日本小型成長株選抜ファンド(SBIAM)/66.00%
9位 UBS中国株式ファンド(UBS)/65.75%
10位 MHAM新興成長株オープン(アセマネOne)/62.51%
※モーニングスターより。純資産10億円以上。DC(確定拠出年金)、SMA(ラップ口座)、通貨選択型、ブル・ベア型を除く
海外の投資ファンドの動きも活発化しつつある。香港籍の投資ファンド「オアシス・マネジメント・カンパニー」は企業経営者へ積極的に意見をぶつけている。ここは“モノ言う株主”とも“アクティビスト”とも呼ばれるタイプのファンドだ。
「オアシスがターゲットとするのは、南部靖之代表のカラーが強いことで知られる人材派遣大手のパソナグループ。東京・大手町で牧場体験ができる『大手町牧場』を開設するなど話題に事欠かないが、投資ファンドの目線では非効率でしかありません。また、オアシスはアルパインに対して親会社のアルプス電気との経営統合計画に異議を申し立て、少数株主が不利になりがちな買収・上場廃止のプロセスに一石を投じています。いずれも
オアシス一社の持ち株だけでは経営判断を左右できませんが、主張を公開することでほかの機関投資家の賛同を狙っているとみられます」(同)
日本では“モノ言う株主”は敬遠されがちだが、
オアシスの株主提案に同調する形ならば、企業に利益還元の強化や経営効率化を要求できるという機関投資家は多そうだ。
「帝国繊維もアルパインも12月期決算。
3月期決算企業に対する株主の要望が出てくるのは4月以降で、6月の株主総会に向けてかけ引きが起こりそう。モノ言う投資家が特別な存在でなくなった今年は、空前の株主提案ラッシュが予想されます」(同)
投資ファンドからの株主提案が明らかになるたびに、株価は大きく動きそうだ。