有名人が軒並み標的に。「オールド・ボーイ」出演俳優にもセクハラ疑惑が浮上
韓国で「Me Too運動」の機運が高まるなか、その風の強さによる危うさも表出している。
日本でも公開された韓国映画「オールド・ボーイ」や「大統領の理髪師」、「国際市場で逢いましょう」などに出演している、韓国屈指のバイプレイヤーとも言われる呉達秀(オ・ダルス)氏も「Me Too運動」の標的となった。
今から30年程前に、呉氏に性的暴行をされたとの告発が、韓国の某ポータルサイトに掲載され、ネットニュース等を通じ一斉に報じられたのだ。
韓国の世論は、呉氏に対する批判の目を向けたが、しかし呉氏はその事実を26日の記者会見で完全否定した。
呉氏は、「(自身の疑惑が報じられたのち)20代であった30年前のことを一つひとつ思い返してみたが、そのような行動をしたことは一切ない」としながら、自身の潔白を主張した。
呉氏に対する告発は、匿名で行われており、そのコメントは既に削除されている。彼は一時期、既出の李潤澤と共に活動しており、李に対する告発の煽りを受けた形だ。
「MeToo運動」は、得てして社会的地位の高い人たちに対する告発が行われる。
有名俳優や演出家もそうであるが、検事や大学教授、大成した企業人らの名前が韓国のニュースを賑わすのがそれを証明している。
性的暴力が、男性の圧倒的な権力を利用し、社会的立場の弱い女性に対して行われやすいことがその理由だ(最近では、男性に対する女性のセクハラ告発も行われたが)。
しかし一方で、社会的な地位が高いからこそ、妬みの対象となり、時には身に覚えのない冤罪被害にあう事もある。
ある女優の告発から始まった「MeToo運動」が、他の有名女優らの協力を得て、社会的な運動に昇華しているアメリカと違い、韓国の「MeToo運動」はまだその体裁をなしていない。被害者の勇気ある告発は、人々の興味にさらされ、ゴシップ化され、時に被害者自身を更に傷つけたりもする。行き過ぎた世論は、当事者たちに必要以上の制裁を要求する。
この「MeToo運動」が目指すものは、告発そのものではないはずだ。その先にある、社会的な成熟こそが求められている。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>