スペースXとマスク氏がこうした計画を立ち上げた目的は、もちろん世界から情報格差をなくすという社会貢献の意味もあるだろうが、大きなビジネスチャンスだと考えているのも間違いない。
スペースXがどのようなビジネスモデルを考えているかは明らかになっていないが、ネット人口が増えれば、接続料や、コンテンツの販売によって多額の収益が見込める。
スペースXは現在、月や火星へ移住する構想を進めており、そのための巨大なロケットや宇宙船も開発しているが、その実現には莫大な資金が必要になる。同社はいまのところ、ロケットで国の機関や民間企業の衛星を打ち上げることで対価を得る、商業打ち上げビジネスで収入を得ているが、それだけではとても足らない。そこで宇宙インターネットによる収入が重要になる。
また、スターリンクのように多数の衛星でインターネットをつなぐという方法は、他の天体でもそのまま応用することができる。将来、月や火星への移住が実現した際、着陸した宇宙船同士の通信や、あるいは都市間の通信、そしてそこに住む人々の通信にも活用できる。
そうなれば、月や火星での生活は地球と変わらないほど便利になり、さらにスペースXにとっては、地球以外でもインターネットで覇権を握ることができる。
スペースXが構想している火星都市の想像図。スターリンクの技術は、こうした地球以外の都市と都市との通信(インターネット)にも役立つ Image Credit: SpaceX
もっとも、月や火星はもちろん、地球のスターリンクでさえも、実現するかどうかはまだ不透明である。
スペースXもマスク氏も、いまのところスターリンクについて詳しいことを明らかにしておらず、公になっているのはFCCに提出された資料くらいしかない。しかしそれは、たんに秘密にしているからではなく、まだ社内でも具体的なことが決まっていないからだとされる。
たとえばウォール・ストリート・ジャーナルは、実際に何機の衛星を打ち上げるのか、どういうビジネスモデルでサービスを展開するのかなどが決まっていないという、同社幹部の声を報じている。
今回、満を持して試験衛星が打ち上げられたものの、その試験の結果次第、あるいは技術的、ビジネス面の検討次第では、中止になる可能性もあろう。
今回打ち上げられた、スターリンクの試験衛星 Image Credit: SpaceX