KADOKAWAが手がける「ところざわサクラタウン」のイメージ。東京都心から30km圏の東所沢に“サブカルの聖地”が築かれようとしている。(所沢市公式サイトより)
「東所沢」と聞いてパっとイメージが浮かぶ人は少ないであろう。そればかりか、首都圏の住民でも一体何線の駅なのかすら分からない人が多いのではないだろうか。そんなJR武蔵野線東所沢駅近くに注目の大型施設が誕生する。
その名は「ところざわサクラタウン」。開発主体は出版大手のKADOKAWA(東京都千代田区)で、五輪イヤー中の2020年完成を目指してこの2月に建設工事の着工を迎える予定だ。
サクラタウンは同社が「クールジャパンの総本山」と銘打つもので、図書館・博物館・美術館を融合した世界初の施設や、アニメの世界観を再現したホテルなど、「オタクの聖地」とも言うべきサブカル要素の強い集客施設が建設される。
各業界からも大きな注目を集めるサクラタウン。その全貌を徹底解剖するとともに、開業に向けた課題を追った。
「トトロ」の舞台近くで繰り広げられるKADOKAWAの一大事業
KADOKAWAが建設する複合施設「ところざわサクラタウン」ができるのは、JR武蔵野線「東所沢駅」から北西に700mほど離れた東所沢和田地区。所沢市とKADOKAWAが産官共同で取り組むまちづくりプロジェクト「COOL JAPAN FOREST」の中核施設として、市の旧浄水センター跡地に建設されるものだ。
なお、この「COOL JAPAN FOREST」構想の推進事業は、産官共同による地方創生の先駆的取組と位置付けられており、国が予算化した「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金・上乗せ交付分」として4881万2000円の交付を受けている。
建設予定地の近くには「松郷」という地名があるが、この周辺は昭和30年代の狭山地域を舞台とするジブリ映画「となりのトトロ」で主人公のサツキやメイが暮らしていた地区のモデルと言われている。
しかし、映画に出てくるような緑豊かな風景は、所沢市の都市公園「東所沢公園」などにわずかに残されているのみで、近隣は住宅街や工業地域へと様変わりしている。
予定地では2月から施設の建築工事が始まる。施設周辺は住宅や工場が立地しているが、道幅の狭い場所も多い
KADOKAWAは「サクラタウン」の開発に約399億円もの大金を拠出することを決めているが、そのうち大部分の310億円を投じて建設するのが、書籍の製造・物流を担う新工場と新オフィスだ。
周辺工場を集約して建てられるこの新工場では最新設備の導入による生産性の向上が、そして1フロア3,000坪の新オフィスでは世界水準のコンテンツ開発拠点としての役割がそれぞれ期待されており、KADOKAWAグループは将来的にこの地に本社機能を移転させることも検討しているという。
建設予定地。防音壁には地元の小学生が描いた絵が展示されている。2020年にはこの地でたくさんの笑顔が生まれることになるのか――