実際の客はほとんど地元住民!? 交通アクセスなどに大きな課題
「クールジャパンの総本山」の異名のとおり、アニメ・サブカル好きにはたまらないコンテンツが盛り沢山になる計画のサクラタウンだが、集客面では様々な課題が残る。
所沢市が行った事前調査によれば、サクラタウンの集客は年間76.9万人から147.6万人程度と算出。しかし、そのうち約7割を施設から10km圏内(所沢市内に加えて東村山市、小平市、富士見市など)に住む「周辺顧客」としており、五輪開催で増加が見込まれる外国人観光客など、広域からの集客実現には高いハードルがあることを暗喩するものとなった。
客見込みでは10km圏内の周辺顧客の割合が圧倒的に高く、インバウンドなど遠方顧客には課題が残る
さらに、広域集客が不安視される理由の1つが開発規模(敷地面積)の狭さだ。
サクラタウンの敷地面積37,382㎡は、横浜・山下公園(74,121㎡)の半分程度。そこから更に工場やオフィスの面積を差し引けば、集客施設部分の開発規模はかなり限られる。ちなみに、埼玉県内で最大の商業施設である「イオンレイクタウン」(越谷市)の敷地面積は337,357㎡と、サクラタウンの9倍もある。
実際に、ロックミュージアム内の図書館の書籍蔵書数は約35万冊だが、これは所沢市立図書館本館の蔵書数約34万冊とほぼ同値。大小2つのホールを備えるジャパンパビリオンに至っては、有名演奏家の公演も多い所沢市民文化センター「ミューズ」よりも総収容人数が少ない。「クールジャパンの総本山」を謳いながらこの程度の規模では、近隣からの集客はともかく、よほどの人気コンテンツの力を借りないと全国・あるいは世界各地からの集客実現には厳しいものがあろう。
そして、広域集客への最大の課題は施設へのアクセス面だ。
東京都心からサクラタウンまでは約30km超。さらに、都心の主要駅や首都圏2大空港(成田、羽田)から最寄りとなるJR武蔵野線東所沢駅へは必ず乗り換えが必要になる。
公式パンフレットの記載によると、成田・羽田からサクラタウンまでの所要時間は鉄道・バスで1時間半から2時間40分と、決して近いとはいえない。また、都心からの鉄道アクセスでさえも1時間近くもかかる。
KADOKAWAと所沢市はサクラタウンの開業に向け、東所沢駅に停車する快速列車「むさしの号」(大宮-八王子)の増便や、サクラタウンを通るバス路線の新設など、施設へのアクセス改善策を交通各社に働きかけていくとしているが、さらなるアクセス改善の「ウルトラC」として、都営地下鉄大江戸線を終点の光が丘駅(練馬区)から東所沢駅まで延伸させるという誘致活動も行われている。仮に同線の終点が東所沢になれば新宿方面からのアクセスは大きく改善するが、もし延伸が実現したとしても開通はかなり先の話になりそうで、アクセス面での課題は開業後もしばらく続きそうだ。
そもそも、施設は東所沢駅前にある訳ではなく駅から徒歩10分ほどかかるため、イベントによっては大きな荷物を抱えたコスプレイヤーなどがこの距離を歩くことにとなってしまう。
成田・羽田からは最短90分でアクセス出来るとしているが、果たしてこれは近いと言えるのか…。(COOL JAPAN FOREST公式パンフレットより)
業界注目の華やかな集客施設を揃える一方で、様々な課題を抱えてのスタートとなりそうな「ところざわサクラタウン」。
来たるオリンピックイヤーに、KADOKAWAは東所沢の地で満開の「サクラ」を咲かせることが出来るのだろうか。
建設予定地のようす。現在、周囲は住宅街や公園が広がる静かな街だが雰囲気は一変するかもしれない。
<取材・文・撮影/佐藤(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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