日本も参加のGoogle主催「月探査レース」、なんと勝者は「なし」。それでも失われぬ意義

 また、同じく米国の民間企業であるアストロボティック(Astrobotic)は、もともとGLXPに参戦し、最有力チームともいわれていたが、2016年末にレースから離脱。独自に月を目指す方向に転換した。早ければ、2019年にも月探査機を打ち上げるとしている。  こうした動きに呼応するように、米国航空宇宙局(NASA)も月探査や月への機器の輸送などを民間に担わせる計画を進めており、ムーン・エクスプレスやアストロボティックなどに技術協力や資金提供を行っている。さらに、GLXPには参戦していなかったものの、イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXや、Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジンも、月探査や移住のビジネス化計画を進めている。  もちろん米国だけではない。日本チームのHAKUTOを運営する企業「ispace」も、昨年12月に独自の月探査計画を発表。2019年に月を周回する探査機を打ち上げ、2020年には月面に着陸し、探査車を使って月面探査を行うとしており、その計画をスタートさせるために必要となる、101.5億円もの資金調達も行っている。  かくしてGLXPの狙いどおり、月を舞台にビジネスをする時代が訪れつつある。その行き着く先は、私たちが誰もが月へ旅行に行ったり、暮らしたりできる未来である。その価値と意義、そして経済的効果は、33億円の賞金よりもずっと大きいことは間違いない。

アストロボティックが考えている月探査機 Image Credit: Astrobotic

<文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。著著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・An Important Update From Google Lunar XPRIZE | Google Lunar XPRIZE(https://lunar.xprize.org/news/blog/important-update-google-lunar-xprize) ・Rocket Lab successfully circularizes orbit with new Electron kick stage | Rocket Lab(https://www.rocketlabusa.com/news/updates/rocket-lab-successfully-circularizes-orbit-with-new-electron-kick-stage/) ・Astrobotic and United Launch Alliance Announce Mission to the Moon | Astrobotic(https://www.astrobotic.com/2017/7/26/astrobotic-and-united-launch-alliance-announce-mission-to-the-moon) ・Moon Express Announces $1.5M In Funding For NASA Payloads To The Moon Under Lunar Scout Program – Moon Express(http://www.moonexpress.com/news/moon-express-announces-1-5m-funding-nasa-payloads-moon-lunar-scout-program-2/) ・ispace – シリーズA国内過去最高額となる101.5億円の資金調達を実施 日本初、民間開発の月着陸船による 「月周回」と「月面着陸」の2つのミッションが始動(https://ispace-inc.com/jpn/news/?p=499
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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