まずスーツとジャケパンはそもそも何が違うのか考えてみましょう。
仕立ての良いスーツの生地は、光沢感がその良し悪しの尺度になります。高級な糸ほど細い糸で織られた生地は光の反射により微光沢を放ち、高級に見えます。しかしながら、たとえば同じウール糸を使っても、スーツとジャケパンの生地はまったく異なります。
森井良行氏/服のコンサルタント。モットーは「プロの目線でユニクロも好印象!」
光沢感を重視するスーツジャケットに対し、ジャケパン用のジャケットでは生地の質感が特徴的です。ジャケパンでは、春夏の場合、麻・綿を混紡し、秋冬では「紡毛糸」と呼ばれるスーツ生地とは異なるウール糸を採用しているのです。
特に、毛羽立ちを特徴とする秋冬のフランネル生地は、視覚的にも温かみが増します。この温かみこそ、安心・親密の印象づけに役立つのです。
さらに配色にも注目すべきです。ジャケパンの定番ともいえる配色といえば? そう、紺色のジャケットにグレーのスラックス(ズボン)です! 上下の生地が異なるからこそ、ビジネスシーンにおいては派手な色遣いを求められないのです。つまり、
ジャケパンの見せ場は色遣いより「質感」と言えるのです。
そして、ついやってしまいがちなのが、購入済みのスーツジャケットにスラックスを合わせてしまう“似非”ジャケパンスタイル。質感がないスーツジャケットに生地の異なるスラックスを合わせた場合、その組み合わせはジャケパンとして成立するのでしょうか?
当然、質感のないスーツジャケットにスラックスを合わせてもエレガントなジャケパンには見えません。むしろ、チグハグな印象に見えるリスクがあります。なぜなら、ネクタイを絞める着こなしまで含めて、スーツは完成するからです。
ノーネクタイスーツや、スーツジャケットの似非ジャケパンは不完全なスーツスタイルとして、だらしなく見えるリスクがあります。お堅い業界の役員級のビジネスマンほど、スーツにボタンダウン・シャツという独自の着こなしが根づいている傾向があるようですが、服と服の組み合わせという視点からは、あまりにいびつに見えます。
大事なことは、
春夏は涼し気に見えるザックリした質感、秋冬は毛羽立ちによる温かみがある質感を選ぶこと。光沢感を重視するスーツの場合、糸が細いからこそ生地は季節を問わず差が出にくいのですが、ジャケパンは生地による質感が善し悪しを決めるのです。