「#Metoo」「ブラック・ライブズ・マター」を活かせなかったグラミー賞が寒かったワケ

受賞結果に現地はしらけムード

 では、現地での反応はどうだったのか? 『ローリングストーン誌』は「ブルーノ・マーズがケンドリック・ラマーを破ったことにショックを受けてはいけないワケ」という見出しで、過去の事例を踏まえながら皮肉たっぷりに伝えている。  数多くのロックの名作が生まれながら、フランク・シナトラが勝利した’66年。グランジやギャングスタラップが猛威をふるうなか、40年前の曲を父親とのデュエットで再録したナタリー・コールが受賞した’92年など、「もともとグラミー賞は“ズレている”」と、かなり批判的だ。
『ローリングストーン誌』

『ローリングストーン誌』も皮肉たっぷりの見出しで、グラミー賞の受賞結果を報じた

 元米ラジオ局の音楽ディレクターを務めていた男性も、現地はかなりしらけていると口を揃える。 「『グラミー賞なんてアーティストにとっては価値がないから』という意見がほとんどです。賞のカテゴリーが増えすぎて、どれが重要なのかもわかりづらい。ケンドリックが獲れなかったのも、『ああ、そうだよね』という感じで、怒るというより呆れている人が多いです」  3月4日には映画界最大の祭典、アカデミー賞の授賞式が行われる。性的暴行が報道された「ウディ・アレンとは仕事しない」と宣言したグレタ・ガーウィグの青春映画『レディ・バード』、黒人監督ジョーダン・ピールの人種問題をテーマにしたホラー『ゲット・アウト』が作品賞にノミネートされているが……。 「#Metoo」や「ブラック・ライブズ・マター」といった世相を反映した作品が受賞すれば話題になることは間違いない。ともに監督デビュー作ということで苦戦が予想されるが、そういった裏テーマを踏まえて賞レースを追ってみては? <取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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