そんな超小型ロケットの打ち上げに初めて成功したのが、米国に本拠地を置く「ロケット・ラボ」という会社である。同社は2006年に設立され、いくつかの有力なベンチャー・キャピタルからの出資を受けるなどし、現在では評価額10億ドルを超える、いわゆるユニコーン企業として知られる。
創設者はニュージーランド出身で、ロケットの発射場などもニュージーランドにある。米国に本拠地を置いているのは、民間企業が宇宙開発をやる際の法律面がしっかり整っていて活動しやすいためで、日本など他の宇宙ベンチャーでも、米国などに本社や支社を置いているところは多い。
今回打ち上げに成功した「エレクトロン」というロケットは、全長17m、直径1.2mと、他の宇宙ロケットに比べると段違いに小さい。高度500kmの太陽同期軌道(地球観測衛星などがよく打ち上げられる軌道)に、最大225kgの打ち上げ能力をもち、まさに100kgくらいの小型衛星から、数kgくらいの超小型衛星を打ち上げるのに特化している。
また、いままでにない仕組みで動くロケットエンジンを採用したり、その製造に3Dプリンターを活用したり、機体には軽くて丈夫な炭素繊維複合材料を使うなど、さまざまな先進的な技術をふんだんに取り入れている。最新の技術、素材を使い、安くて性能のいいロケットを開発するという方針が貫かれている。
2017年5月には1号機の打ち上げが行われるも、失敗。ただ、その原因は簡単に修正可能なもので、またその部分さえ動いていたらなら打ち上げが成功していた可能性が高いとされたことから、今回の2号機の打ち上げに注目が集まっていた。
そしてその言葉どおり、2機目の打ち上げにして、完璧な成功を収めたのである。
飛行中のエレクトロンから送られてきた映像。背後に地球が見える Image Credit: Rocket Lab
今回の打ち上げが成功したことで、次の3号機からは、いよいよ商業的に打ち上げサービスを始める段階に入る。つまり衛星会社などからの発注を受け、衛星を宇宙に送り届けることで対価をもらう、宇宙の輸送業のようなサービスである。
エレクトロンの打ち上げ価格は明らかにされていないが、おおよそ600万ドル以下とされる。これは十分に妥当な数字であるとみなされているようで、すでにいくつもの企業から受注を取り付けている。今回の打ち上げ成功を受けて、さらに契約数は増えるだろう。
また、エレクトロンは、ニュージーランドだけでなく米国などからも打ち上げができ、年間100機を超える打ち上げをこなすことができるという特徴もある。これまで、これほど矢継ぎ早に打ち上げができるロケットはなかった。これにより顧客の希望どおりのスケジュールで打ち上げられる柔軟性が生まれるばかりか、規模の経済によって価格も安くなっていくだろう。
もちろん、ロケットには失敗がつきものであるなど、宇宙ベンチャーは大きなリスクと隣り合わせであることを考えると、ロケット・ラボがビジネスとして成功できるかどうかまだわからない。しかし、ひとまずは良いスタートを切ったといえよう。