20年来、「理屈は学んだけれども、行動で再現できない」「理論は勉強したが、ビジネスにどう役立てればよいかわからない」という不満の声を解消するべく、私は頭ではなく体で確かに身に付く能力開発プログラムを開発し実施してきました。
その結果、たどり着いたのが、身に付けたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する「分解スキル反復演習型能力開発プログラム」です。全30プログラム、2時間で1プログラムを実施するが、2時間のうち90分はひたすら話法検討やロープレやグループでの検討や共有などの演習。スキルについての解説は一切行わないかわりに、私から参加者に質問し、それに対して自由な回答をしていただきながら進行していくプログラムです。
そこには、解説もなければ、押しつけもない。注意事項もなければ、チェックされることもない。参加者の能力を高めたいという意欲を尊重して行うプログラムになっているのです。
しかし、こうしたプログラムはいまだにほとんどありません。解説ばかりの注意事項オンパレードの研修に参加してしまったら、どうすればいいのでしょうか。解説の中から、自分にとって役立ちそうなパーツを見極めて、そのパーツについて、自分だったらどのように行動するか、考えながら聞けばいいのです。
「そんなことをしたら、解説についていけなくなる」という質問をいただくが、ついていけなくっても大きな問題はない。解説中心の研修では、たいてい克明に記載された資料が配布されるので、後に、それを、押し付けされない環境でのびのびと読み返せばいいのです。仮に資料が配布されなくとも、インターネットで検索して必要な情報を得ればいいでしょう。
もし、それもしたいと思わなかったら、何もせずに内職していたほうがいいです。自分自身が能力を高めたいと思うかどうかという点こそが、能力を向上するために、最も重要な要素だからなのです。
<TEXT/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある