早稲田大学の113億円リスク資産投資は本当に大丈夫なのか?
また、ハーバード大学は、2017年6月期に年間+8.1%のリターンを上げた。数十年続けてきた投資戦略を現在転換中であり(参照:Message from the CEO )、現在のポートフォリオの詳細は公表されていないが、投資戦略を転換する前の目標ポートフォリオは以下の通りであった。(参照:September 2016 Annual Endowment Report)
米国内の株式:10.5%
米国以外の株式:7.0%
新興国株式:11.5%
未公開株:20.0%
絶対収益:14.0%
不動産:14.5%
天然資源:10.0%
米国内の債券:9.0%
米国以外の債券:1.0%
インフレーション連動債:2.0%
ハイイールド債:0.5%
ハーバード大学もイェール大学と同様に、多様なアセットクラスに分散投資しており、未公開株や絶対収益型ヘッジファンド、不動産なども投資対象としている。
現行の早稲田大学のポートフォリオの内、株式5%、債券60%であるので、イェール大学やハーバード大学のものとは構成比が著しく異なる。しかしながら、海外の未公開株、インフラ投資、不動産など多様なリスク資産を保有していく方向性は、筆者には、イェール大学など米国大学基金のポートフォリオを参考にしているように思われる。
明らかに、早稲田大学が目指すポートフォリオは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が「安全かつ効率的な運用」を行う観点から定めた「基本ポートフォリオ」とは異なる。GPIFの「基本ポートフォリオ」は、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%である。
株式、債券を中心とする伝統的なアセットクラスを対象とする運用と非伝統的なアセットクラスの方が多い運用とを比較して、本当に後者のほうがパフォーマンスは優れるのだろうかという疑問を筆者は持っている。未公開株のパフォーマンスは、上場企業の株式のパフォーマンスよりも本当に良いのか? インフラ投資や不動産投資は、株式よりもパフォーマンスが本当に良いのか?というような疑問である。
2017年6月末を決算日とするイェール大学の年間パフォーマンスは、+11.3%であった。(参照:Investment return of 11.3% brings Yale endowment value to $27.2 billion)
また、上述の通り、ハーバード大学は、2017年6月期に年間パフォーマンスは、+8.1%であった。
評価する期間が半年ずれるものの、2017年末時点の年間パフォーマンスは、ダウ平均 +25%、S&P500 +18%であり、両者ともにイェール大学 +11.3%、およびハーバード大学 +8.1%を上回る。
単年度だけでは判断できないが、2017年は、ダウ平均やS&P500などのベンチマークと連動するETFを保有するというコストがかからない平易なやり方の方が、イェール大学やハーバード大学のハイリスク・ハイリターンを目指した設計の運用成績をアウトパフォームしており、未公開株などの非流動性プレミアムが必ずしもいつも実現されるわけではないことがわかる。
米国の大学基金のパフォーマンスは本当に優れているか?
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