もうひとつキャッシュレス決済の普及を強く感じたのは、個人間送金アプリの利用だ。「割り勘アプリ」とも呼ばれ、日本国内でも「LINE Pay」、「Paymo」、「Kyash」などがサービスを開始している。在ポーランドの日系企業に勤める男性に話を聞くと、「飲み会ではカードで建て替えて、アプリで割り勘が当たり前」なんだとか。
「銀行が運用しているものが主で、直接口座に送金できるところが便利です。口座を開設する時点で『お客様番号』が与えられ、それがそのままアプリのアカウントナンバーになります。アプリ上で『口座情報を送る』ボタンを押すと、自動的にSMSに口座番号が表示され、あとは送信するだけ。受信した相手は自分が使っている銀行のアプリにその情報をコピペして、送金します」
SMSやカメラ機能とも連動しているので、アプリで手軽に送金できる
こういったアプリには、自動的にカメラが起動されてQRコードを読み取る機能も搭載されており、読み取った時点で入力やコピペせずに送金画面に飛ばされるというものも少なくないという。金額を確認し、暗証番号を入力するだけで送金できるという手軽さだ。筆者も現地で割り勘する場面に遭遇したが、こうしたアプリは持っておらず……。現金で払おうとしたが、「おつりがないからいいよ」とやんわり断られてしまった。
日本国内でも銀行が運用するアプリはあるが、いったん電子マネーをチャージするなど、ダイレクトな個人間送金はできず。「何かするにもいちいちウェブサイトに飛ばされるから、そもそもアプリの意味がない(苦笑)」(在日アメリカ人男性)という辛口な声もある。
とはいえ、今年1月からは富士通がみずほ、三井住友、三菱UFJ、三大メガバンクと個人間送金の実証実験を開始。クレジットカードのタッチ機能同様、こちらも東京五輪に向けて急ピッチで普及が進みそうだ。
<取材・文・撮影/林 泰人>
参照:
https://www.ecb.europa.eu/press/pdf/pis/pis2016.pdf
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン