開発コミュニティの動向にも価格は左右される。
「そもそもビットコインの誕生は’08年。テクノロジーが運用されてからまだ9年しか経っておらず、技術革新の真っ只中。まだまだ不備があって当然な段階ですが、そうしたニュースも価格変動の要因になっていますね」
前述したように取引所の不祥事やマクロ経済も人々の心理に強く影響を及ぼし、仮想通貨の乱高下に繋がる。
「’14年に起こった
マウントゴックス事件のような取引所の事件や事故のニュースにも、市場は強く反応します。’13年のキプロスや’15年のギリシャのように、国の財政が破綻すると現地通貨の価値が暴落するので、
『有事の仮想通貨買い』が起こります。国が発行している通貨とは異なる要因で変化するものなんです」(大塚氏)
ハイリスク、それゆえに投資対象として人々を惹きつけてやまないビットコインやアルトコイン。今後の仮想通貨投資は、どのようなトレンドに流れていくのだろうか。
「引き続き法定通貨から仮想通貨にリスクマネーが流れ、市場が拡大するのは間違いないでしょう。これまでは投資対象はビットコインに集中していましたが、今後のトレードにおいては、ビットコインとリップル、リップルとイーサリアム、というように
仮想通貨同士での取引が加速していくと思われます」(大塚氏)
ビットコインは、石油取引におけるドルのように他のコインとの取引における「基軸仮想通貨」として、ますます重要な立ち位置を担っていく。
「ICOへの集中投資などで一攫千金を成し遂げた人たちも、今後はその資産を守るための分散投資をより進めていくのが、これからの仮想通貨投資のトレンドになっていくのでは」(大塚氏)
「分散投資は富を守る。集中投資は富を築く」―― とは、世界一の投資家・バフェットの名言。株投資の神の御言葉は、仮想通貨市場でも健在だ。
リスクを抱えながらも、当面は堅調に伸びていきそうな仮想通貨市場。新たな投資先として、うまく活用すれば資産形成の大きな味方になるのは間違いない。
《主要アルトコイン一覧》
●ビットコインキャッシュ
今年8月、従来のスケーラビリティ問題を解決するためビットコインから分裂、11月に史上最高値を更新
●Zcash
匿名性の高さが特徴。大手金融会社JPモルガンと提携、今年9月には韓国取引所への上場が材料視され価格急騰
●イーサリアム
時価総額第2位。取引情報に加え契約情報もブロックチェーン上に記録するスマートコントラクトを導入
●イーサリアムクラシック
分散投資型ファンド「DAO」のハッキング被害をきっかけにイーサリアムからハードフォークにより分裂
●Augur(オーガー)
オンライン賭け市場の専用のデジタルチップ。ギャンブルだけではなく、保険ビジネスの仕組みを変える可能性も
●Dash(ダッシュ)
匿名性に特化、「Instant X」と呼ばれる機能により約4秒で送金可能に。11月には、中国の大手取引所に上場
●NEM
時価総額は第4位。Proof of Importanceというアルゴニズムが特徴。開発には日本人が関わっている
●Factom
ブロックチェーンを基盤とする改ざん不可能な電子記録を作成・維持・管理を目指すプラットフォーム
●モネロ
匿名性が特徴。安全でプライベートかつ、追跡不可能な暗号通貨を目指す。アルゴリズム「CryptoNight」を採用
●ライトコイン
元グーグルのエンジニアにより公開。ビットコインの技術的解決策の最有力候補「セグウィット」を採用
●Lisk
サイドチェーンによる承認スピードの早さなど末端ユーザーへのサービスが充実。Microsoftとパートナーシップに
●リップル
リップル社が開発した電子決済システム、送金ネットワーク。XRPを使い、さまざまな法定通貨と取引が可能に
《取引所一覧》
●Coincheck(コインチェック)
ビットコイン取引高が日本一のベンチャー系取引所、計13のコインを扱う。ほとんどの通貨をコールドウォレット(オフライン)で管理している。アプリの使いやすさに定評
●bitFlyer(ビットフライヤー)
テレビCMも放送する国内最大手の取引所、リクルートやGMOが出資。高性能取引ツール「ビットフライヤーライトニング」ではレバレッジをかけて取引も可能
●kraken(クラーケン)
米国に本社を置き、’14年に日本進出、海外取引所であるが日本語対応をしている。ユーロービットコインでの取引量が世界一を誇る。アルトコインの取引手数料が安い
●Zaif(ザイフ)
ベンチャー企業のテックビューロが運営、ビットコインなどのほか、独自のトークンを扱っているのも特徴的。銀行口座から毎月固定額を自動引き落とすコイン積立制度も
【大塚雄介氏】
【大塚雄介氏】
’80年生まれ。早稲田大学大学院修了。大手取引所のコインチェック株式会社、共同創業者兼COO。著書に「
いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン」
【高城泰氏】著書「ヤバいお金」
【高城泰氏】
投資ライター。2014年のマウント・ゴックス社の破綻前から仮想通貨の取材に着手。著書に「
ヤバいお金」「
FXらくらくトレード新入門」がある。ツイッター
@takagifx
取材・文/アケミン、高城 泰(ミドルマン)、浜田盛太郎・池垣 完(ともに本誌)
図版/ミューズグラフィック
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