「モール反対」で自治体とイオンが対立! その突破口はイオンによる「行政のお荷物解消」だった

「お荷物再開発ビルの再生」で手に入れた増床権

 甲府昭和の増床計画が未遂に終わり、計画認可への糸口を模索していたイオンモール。そうしたなか、同社が目をつけたのが甲府市中心部で不振に喘いでいた再開発ビル「ココリ」だった。

2010年に開業した甲府市中心部の再開発ビル「ココリ」。下層の商業施設でテナントの撤退が相次ぎ、一時は瀕死の状態に陥っていた

 ココリは大型店の相次ぐ撤退により地盤沈下が叫ばれていた甲府市中心部の活性化を目的に2010年8月に開業。総事業費約107億円のうち半分を甲府市と山梨県、国がそれぞれ補助金として負担した。 「ココリ」とはビルが所在する「甲府市紅梅町オリオン通り」の略に由来し、建物は20階建て。20階~9階がタワーマンション、8~7階が宝石専門学校、6階~3階が駐車場、そして2階~地階が商業施設となっている。  ココリは上層のマンションが僅か2か月で完売するなど好調な滑り出しを見せた一方で、下層の商業施設は宝石の国として知られる同地方の特産品をアピールしたいという思惑から「アウトレットジュエリーモール」を核としたため、官庁街にあるという立地とのミスマッチもあって大きく苦戦。テナントの撤退が相次ぎ、2011年12月には2階をサブカル店中心の「ホビータウン甲府」に改装したが根本的な集客不振を解消するには至らず、ジュエリーモールを核店舗に決めた行政の責任が問われる事態となっていた。  そうしたなか、ココリの救済に手を挙げたのはイオンモールだった。  2014年末にココリとプロパティマネジメント契約を結んだイオンモールは、翌年の2015年春から2016年夏にかけてココリの大規模改装に着手する。  そして、スーパーマーケット「イオン」を核に、「イオンリカー」、「未来屋書店」といったイオン系テナントや、「築地銀だこ」、「サンマルクカフェ」といった飲食店を誘致することで利便性を大幅に改善。地域密着型の都市型ショッピングセンターとして生まれ変わったココリは好調な滑り出しを見せることとなった。  こうしたイオンモールによるココリ再生を「地域貢献策」として評価した山梨県は、2016年7月にイオンモール甲府昭和の増床計画を容認。さらに、2017年1月には甲府市、甲府商工会議所、甲府商店街連盟とイオンが「地域貢献協定」を結び、長年の対立関係は一気に雪解けへと進んだ。  そして、増床予定面積を12パーセント削減するというイオン側の譲歩や、増床反対派だった横内前知事の退任などといった複合的要因もあり、イオンモール甲府昭和はようやく今年11月の増床リニューアルオープンにこぎつけたのだった。
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中心部と郊外で広がる「イオン格差」
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