伝説の番組「風雲!たけし城」が、サウジアラビアで「要塞」と呼ばれ親しまれていた

TBSのコンテンツがサウジ王族の琴線に触れるワケ

 今回の件だけではなく、実はTBSに対して2年前に似たような案件がありました。2015年5月にサウジアラビアのファイサル・ビン・バンダル・ビン・スルタン・アルサウード王子(以下、ファイサル王子)がサウジアラビアのテレビ局を通じて巨大フィールドアスレチックを攻略していくスポーツエンターテイメント番組「SASUKE」のアラブ版である「Arabian Ninjya Warrior(仮)」を作りたいと来日しTBS本社を表敬訪問したという過去があります。
高カロリーなクッキー

アラブの高カロリーなクッキー達

ファイサル王子

2015年5月22日、TBSを表敬訪問したファイサル王子TBS((c)Riyadh News)

 これは自身も撮影現場に行くほど「SASUKE」が好きなファイサル王子の意向が働いたもので、アラビア語圏全域におけるフォーマット権を獲得すると共に、最終話収録では両日共に現地入りをしてスケジュールを全て変更し収録を見続けるという相当な熱の入れようでした。  まだサウジアラビアでは「SASUKE」に関して続報はありませんが、今回の「風雲!たけし城」のこともあるのでおそらく水面下では進んでいると考えられます。TBSの持つコンテンツはどうやらサウジ王族の琴線に触れるものが多いようです。
ファイサル王子と山田勝己

ファイサル王子とSASUKEの有名選手、山田勝己

 前述の「SASUKE」もそうなのですが、なぜムハンマド皇太子殿下が若者への娯楽として「風雲!たけし城」を選んだのか。  それは第一に、ムハンマド皇太子殿下の趣味です。ムハンマド皇太子殿下の日本好きの面は色々なところで有名で、その部分の要素が大きく働いたことは当然と言えます。  ですがそれ以外の面で考えるとまた今年3月に来日したサルマン国王が日本との間に結んだ「日・サウジ・ビジョン2030」という双方のパートナーシップ戦略の中にヘルスケアと医療、文化・スポーツ・教育の分野が挙げられていました。  サウジアラビアの国内における社会変革の中でスポーツによる国民の健康増進はサウジアラビアにとって大きな課題と言えます。
協力分野

今回は9分野の協力分野のうち、④と⑧がポイントとなる(資料:外務省、経済産業省より)

 サウジアラビアはその気候条件から外に出て運動する、という習慣に乏しく、さらにアメリカナイズされた食生活の影響を受けたためか成人人口の肥満率はWHOやOECDなど統計にもよりますが、成人人口の30~35%近くが肥満とされています。  さらにこの肥満により併発する糖尿病が若年層でも広がっており肥満と糖尿病が原因で年々車椅子に乗る人達が増えています。  サウジアラビアでは医療サービスを国が無償で行うため、この糖尿病に対する国家の経済負担は年々上昇しサウジアラビアの保健省予算は年々増えています。さらに未来の労働力とも言える若年層が肥満で動けない、というのは国家として避けたいところがあります。
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社会的な肥満を解消するため、スポーツ番組を増やしたいというサウジの狙い
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