東北発の人気洋菓子店が首都圏撤退!「ラスク人気」で上場から一転、その背景は?
<取材・文・撮影/若杉優貴・佐藤(都市商業研究所)> 【都市商業研究所】 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」来年3月末を以て首都圏から身を引くシベールは、今後はもともとの地盤である山形県・宮城県へと経営資源を集中することとなる。とりわけ東北経済の中心地とも言える宮城県仙台市内での店舗展開が再興の鍵となりそうだ。 実際に、近年は2016年3月に開業したJR仙台駅ビル「エスパル仙台東館」や、2015年12月に開通した仙台市営地下鉄東西線の沿線である荒井地区など、人口増加の続く仙台市の中でも特に注目度の高いエリアへの出店を加速しており、同社が仙台市を地元の山形県やかつて積極展開していた首都圏以上に重要なマーケットとして位置付けていることが伺える。 また、かつてはラスクの販売高が大半を占める「ラスク依存体質」を指摘されていたシベールだが、最新の決算ではラスクが占める割合は通信販売、店舗販売の両部門を合わせても39パーセントにまで大幅に低下。 来期決算では首都圏からの撤退により店舗販売高がさらに減少するのは確実となっており、「ライバルからの敗北」という不本意な理由ながらも「ラスク依存」の状態を脱しつつある。 その一方で、最新決算で図らずも全体の販売高トップに浮上したのが「パン」の店舗販売だ。これは、郊外の大型店舗「シベールの杜」などに併設されているベーカリー「パン工房」での売上が大きいと見られている。 焼き立てパンは日常的な来店を促す働きを持つうえ、ブームに左右されない安定した売上を見込める部門として、今後さらに存在感を増すものと考えられる。 ラスクブームの火付け役となり、首都圏進出、ジャスダック上場…という成長曲線を描くことで業界にその名を轟かせたシベール。 首都圏からの撤退と地元・東北への経営資源集中、そしてラスク誕生の礎となったベーカリー部門のシェア再拡大は、かつて製パン事業により成長してきたシベールの「原点回帰」を感じさせる出来事だといえよう。 シベールのラスクは今後も銀座の山形県アンテナショップ「おいしい山形プラザ」などで販売を続けるというものの、約13年に亘って首都圏でも親しまれた店舗が消えてしまうのは残念なことである。再びその看板が都内各地に戻って来る日を願ってやまない。今後は東北で「原点回帰」、ベーカリー事業に注力
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