東北発の人気洋菓子店が首都圏撤退!「ラスク人気」で上場から一転、その背景は?
かつて「ラスクフランス」で一世を風靡し、ジャスダック上場を果たすなど話題を呼んだ人気洋菓子店「シベール」(山形市)の業績が振るわない。 同社は東京進出1号店の麦工房 東京青山店(港区南青山)と川崎アゼリア店(川崎市)の2店舗を赤字店整理のため10月31日付けで閉店させるとともに、エキュート立川店(立川市)も来年3月での閉店を予定。これにより、シベールの直営店は首都圏から姿を消すこととなる。 あの「ラスクブーム」から一転、「東北の洋菓子界の雄」が大ナタを振るわざるを得なくなった背景には何があったのだろうか。シベールは1966年に山形市で創業した老舗洋菓子店で、山形県や宮城県各地で洋菓子店やパン屋などを展開。1994年にそれまで売れ残ったフランスパンを加工して作っていた「ラスク」の通信販売を開始すると、贈答品やお取り寄せ商品として人気を呼び、売り上げを大きく伸ばすこととなった。 2004年10月に港区・南青山に直営のラスク販売店「麦工房」を開設して首都圏に進出すると、2005年7月にはジャスダックに上場。その後は日本橋三越本店や玉川高島屋といった有名百貨店にも出店し、店舗網をさらに拡大していくかに思えた。 しかし、全盛期には最大約25億円を誇っていたラスクの販売額(通信販売・店舗販売の合計)は、最新の2017年8月期には約12億円と半分以下まで減少。 店舗販売部門はピークだった2013年8月期から2割以上も落ち込んだほか、頼みの綱だった通信販売部門の販売高は全盛期(2008年8月期)から販売高を7割も落としてしまった。その大きな要因は一体なんだったのであろうか。上場から12年、ラスク販売高は全盛期から半減
シベールがラスクの販売高を大きく減らした要因の一つが、首都圏に拠点を置くライバルの出現だ。 例えば、群馬の老舗和菓子店を起源とする「ガトーフェスタハラダ」(高崎市)は、ラスク製造を本格化させた2000年代から百貨店での販売を中心とする「高級志向」で積極展開。看板商品であるフランス国旗が描かれたパッケージのフランス風ガトーラスク「グーテ・デ・ロワ」は贈答品としても人気を呼び、全国24店舗を構えるまでに成長した。 また、2002年に菓子卸からラスク販売に転身した「グランバー東京ラスク」(松戸市)は、バラエティに富んだ変わり種ラスクを特徴としており、首都圏の駅ビルや駅チカ、空港などの交通結節点や東京ソラマチ、東京タワーなどの観光施設を中心に積極展開。屋号でも「東京のラスク専門店」であることをアピールし、その店舗立地もあって「東京土産」として定着しつつある。 これらのライバルは、いずれも1990年代にシベールが本格化させたラスク販売の後を追う形で参入した企業。しかも、山形県発祥のシベールに比べて首都圏で培ってきた地盤があり、首都圏の消費者の好みや出店戦略などといった「勝負の仕方」を熟知していたというアドバンテージもあった。 その一方、シベールはもともと通販での売上に頼っていた企業ということもあり、とくに実店舗では特徴性が出せずに迷走。首都圏での地盤を固める前に現れたライバルたちが個性を出し「高級化」「東京土産化」と差別化を図るなかでシェアを奪われるかたちとなり、結果的に首都圏からの全店撤退を決めるに至ってしまったのだ。ブームで出現した「首都圏のライバル」に太刀打ちできず
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