バルセロナ在住日本人が見たカタルーニャ独立運動「半分以上は独立に対し冷ややか」

「ほとんどの住民は独立に利を感じていない」

 普段の生活で、一番影響を受けて困ったのが通勤だという。 「私はバルセロナの西の端に住んでいて、会社は東の端だから普段でも一時間かかるのね。そこにストライキが重なったから、メトロもバスも全然動かなくなっちゃって、しょうがないから行くしかなかったんだけど、今度は高速道路がデモで封鎖される、市内の主要道路もダメという話になって職場でも大騒ぎになったよ。それで早退する人がいたり、逆に遅く帰ろうとした人がいたりとか」  こういう状況になると、物流に支障が出るのではないか。スーパーなどでの買い物に問題は出ていないのか。 「バルセロナ中心部では少なからずそうかもしれないけど、私の住んでいるエリアに限っては、みんなハロウィンムードで浮かれていて、何の問題もおきてない」  それから日本の新聞で「独立反対派デモ」があったことが報じられた。 「うん、あったよ。私の周りは誰も参加してないけど、ちゃんと憲法に基づいて話し合えとか、バルセロナ在住のスペイン人もそうだし、カタルーニャ人でも冷静な人は沢山いるから、経済の問題もあるし」  実際、美佐江は個人的に悩みを抱えているという。 「夫婦でそろそろ不動産を買おうかという話があったんだけど、ユーロが使えなくなるかもしれない、現実にもう何千社の企業がカタルーニャから撤退しているという中で、不動産が暴落するという話もあって、買うに買えないのよね」  実際、カタルーニャ独立はいいことにはならないと彼女は考えている。 「やっぱりユーロを使えない、EUに入れないのは大きいし、ヨーロッパのどこの国も独立を認めてないじゃない」  英国だってカタルーニャを認めたらスコットランド独立を認めなければならなくなる。 「ホントそうだよね。だから認められるはずがないし。日本の報道がどうなっているかよくわからないんだけど、日本の友達に聞くと“カタルーニャが独立に燃えていて、スペインが弾圧している”みたいな言い方らしいけど、そんなことないよ。半分以上は独立反対もしくは中立派だと思う。反対もしくは中立派は投票自体行っていない場合が多かったので。それで、過半数に少し足りない賛成派の声が大きくなり、何となく反対の声をあげにくい雰囲気になってるよ」  次回は現在市井のバルセロナ住民の間に起きている「分断」についての第二弾を送りたい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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