「折り畳み2画面」! NTTドコモが中国メーカーと手を組み斬新なスマホで世界を狙う理由

「折り畳み2画面」になった理由とは?

 M Z-01Kの発表後には、「MEDIAS W N-05Eの再来」との声もあった。  「MEDIAS W N-05E」はNTTドコモが2013年4月に発売したNECカシオモバイルコミュニケーションズ(当時、2016年3月に解散)製のスマホで、M Z-01Kと同じようなスタイルを採用した。折り畳み式で2画面を搭載したスマホの再来となったが、なぜそれが今なのか。  NTTドコモによるとSNSや動画など様々なスマホ向けサービスが普及し、2画面を同時に見たいとの需要が存在するという。消費者の需要が多様化する中で、従来の一般的なスマホとは異なる利用シーンを提案し、使い方の多様化をもたらす。超個性的なスマホを投入して競合他社のラインナップと差別化する狙いもある。

本体をL字型に開くと立てかけて使える

 また、発売当時、MEDIAS W N-05Eの売れ行きは悪かったが、いまは当時の状況とは異なるという。これを説明するためか、想定問答にはMEDIAS W N-05Eとの比較もあった。  MEDIAS W N-05Eは画面周囲の額縁が広く、2画面を1枚の大画面のように表示しても一体感はなかったが、額縁を狭く設計して一体感を高めた。OSのAndroidも進化しており、2016年8月に正式リリースしたAndroid 7.0 (Nougat)以降から標準でマルチウィンドウに対応したため、2画面はOS標準の機能を活用して実現できた。さらに、基本的な性能も飛躍的に向上して同時に複数のコンテンツを快適に利用可能となり、2画面を生かせる環境になったことが「再来」の背景にある。

ニッチだからこそグローバルモデル

 超個性的なスタイルは様々な可能性を秘めるが、現時点で主流になるとは考えにくい。NTTドコモも主流になるとは考えておらず、だからこそ「ドコモ発のグローバルモデル」なのだろう。  過去に超個性的な従来型携帯電話を発売したとある日本メーカーの関係者は「具体的な数は言えないが、(超個性的な従来型携帯電話は)売れなかった。しかし、iPhoneが半分を占める今、同社が売れたと感じる数は過去の売れなかった数に近いくらい厳しく、(超個性的なスマホの開発は)難しい」と話した。

本体を閉じれば一般的なスマホと同様に使える

 時期によって差はあるが、日本のスマホ市場は出荷台数ベースで米国・アップルのiPhoneが半数程度を占める。iPhone以外のスマホは残りの半数程度でせめぎ合うことになるが、一般的なスマホも販売が低迷する中で、莫大な開発費を投じて超個性的なスマホを出す余裕はない。2画面の需要が存在するとはいえ、NTTドコモも今の日本市場でM Z-01Kの販売台数はそれほど多く見込んでいない。だから、グローバル展開を前提としたのだ。  外国の携帯電話事業者では少なくとも米国のAT&T、英国のボーダフォン・グループ、中国の中国電信がAxon Mを取り扱う。いずれも世界的に巨大な携帯電話事業者だ。  AT&Tは加入件数ベースで米国2位、加入件数は1億を超える。ボーダフォン・グループは傘下企業を通じて20以上の国・地域で携帯電話事業を手掛け、加入件数は総数で4億を大幅に上回る。中国電信は中国で加入件数が最も少ないが、世界最大規模の中国市場で加入件数は2億を超える。NTTドコモの加入件数は7500万程度、必ずしも各社の傘下企業も取り扱うとは限らないが、NTTドコモ、AT&T、ボーダフォン・グループ、中国電信とそれらの傘下企業を合わせると加入件数は9億超の規模となる。  また、ほかの携帯電話事業者が採用する可能性もあるという。巨大な携帯電話事業者に大口納入すれば、ニッチなスマホでもそれなりの台数が売れる可能性は十分にある。  そして、NTTドコモ以外の販売分も提案者のNTTドコモにロイヤリティが入る契約という点は要注目だ。具体的な条件は非開示だが、外国で販売するAxon MもNTTドコモの収益につながる。ニッチなスマホだからこそ、このようなビジネスモデルが有効なのかもしれない。このビジネスモデルが成功すれば、さらなる超個性派スマホの登場も期待できるだろう。 <取材・文・撮影/田村和輝> たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ
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