Tカードより先に「Ponta」が浸透しつつある台湾
実は、日本のポイントサービスが台湾に進出するのはTポイントが初ではない。
Tポイントの最大のライバルであり、「三菱商事」、「ローソン」、「ゲオ」、「日本航空」などが共同出資した「ロイヤリティマーケティング」により運営される共通ポイントサービス「Ponta」は、Tポイントの台湾進出に先駆けて2014年に台湾上陸を果たしている。
「Ponta」が提携先に選んだのは台湾のメディア大手「東森グループ」で、台湾では独自の共通ポイントカード「得易Ponta」を発行。この得易Pontaは平たく言えば「台湾専用のPontaカード」で、台湾東森グループの通販サービスや宿泊施設、台湾コンビニ大手「OK-mart」(サークルK)、同じくコンビニ大手の「Hi-Life」、日系牛丼チェーン「台湾吉野家」、航空会社「長榮航空」(エバー航空)などが加盟。
日本のPontaカードとほぼ同じように使うことが可能で、サービス開始から約2年で会員数600万人を突破するなど着々と規模を拡大している。
さらに、この得易Pontaも2015年から訪日台湾人向けサービスを開始したほか、日本人の台湾旅行者もスマホアプリを通して独自のポイントを取得できるようになっており、「日台のPontaポイント相互利用」に近いサービスを構築している。
台湾で店舗網を広げるTSUTAYA、今後は「台湾版Tカード」も登場か?
Pontaが台湾で広く使われるようになったものの、台湾にはPontaに出資する中核企業の「ローソン」や「ゲオ」などは進出していない。
それに対し、Tポイントの中核企業である「TSUTAYA」は、台湾では2012年より台湾地場エンターテイメント企業「亞藝國際」と共同で「TSUTAYA 亞藝影音」(21店舗)、「TSUTAYA BOOK STORE」(1店舗)を展開しており、徐々に店舗数を伸ばしつつある。
一方で、「HAPPY GO × T Point」は、現時点で台湾のTSUTAYAでは使うことができないばかりか、現時点では台湾の企業ではHAPPY GOなどを経ることなく直接Tポイントが付与される店舗やTポイントが使用できる店舗はまだない。さらに、日本人の訪台旅行者がHAPPY GO加盟店でTポイントを取得することもできず、台湾ではTポイントの影響力はまだまだ小さいのが現状だ。
表:台湾における「Tポイント」と「Ponta」の違い
CCCは亞藝國際を通じて台湾でのTSUTAYA事業の拡大を図っていく方針であり、今後は台湾独自のTポイントサービスの展開や日本国内でも人気となっている大型複合書店「蔦屋書店」の新規出店も予想される。
台湾では蔦屋書店の経営方針に大きな影響を与えたといわれる台湾大手書店「誠品書店」が生活提案型の複合店舗「誠品(eslite)」を多店舗展開し絶大な人気を誇っているほか、日本の大手書店「丸善ジュンク堂書店」や「紀伊國屋書店」も大型店を展開するなど、大型書店の競争が非常に激しい地域だ。
誠品書店の大型店「eslite」。文具や雑貨なども販売する人気の複合書店だ(台北市信義区)。
Tポイントサービスと大型複合書店の展開拡大により、その「企業力」を日本全国へと知らしめることとなったCCC。
今後はCCCが台湾でもポイントサービスの拡大を図り、自身が得意とするポイントサービスを用いた顧客分析力を活かすことで更なる事業拡大に繋げることができるのか。そして地元市場で先行する「誠品書店」や「Ponta」の牙城を崩すことができるのか。国際企業としての第一歩を踏み出したCCCの更なる一手が注目される。
CCCの旗艦店である大型複合書店「枚方T-SITE」(大阪府枚方市)。誠品書店の展開により市民が「複合書店」という業態に慣れ親しんでいる台湾だけに、台湾でもこうした大型の蔦屋書店が展開されることになるのであろうか。
<取材・文/淡川雄太 若杉優貴 撮影/山村拓巳(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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