ヨーロッパ市場における一般航空と格安航空の利用率は、2007年には前者60%、後者20%であった。それが、2016年になると前者は50%近くまで下がり、後者が30%を幾分越えるまでに成長している。この両者のシェアー率は国によって違いがあり、格安航空の発展が遅いのはドイツ、その逆に伸びているのは英国やスペインである。
スペインのビジネススクールEADAのアティナ・シスマニドウ教授によると、一般航空と格安航空のそれぞれ利用率の差はこれから更に縮むという。実際に、これまで格安航空がヨーロッパ圏内だけをフライトルートにしていたが、ノルウェジアン航空のように低料金で長距離へのフライトも行うようになっている。(参照:「
El Periodico」)
この両者の利用率が縮まるのを懸念して、一般航空も格安航空を傘下に加えたグループ化を進めている。
現在、ヨーロッパには大きく分けて3つのグループが存在している。
●IAGグループ(イベリア航空、英国航空、ブエリング航空、エアリンガス航空、レベル航空)
●ルフトハンザグループ(ルフトハンザ航空、スイス航空、オーストリア航空、ユーロウィング・ヨーロッパ、ブルッセル航空)
●エールフランスとKLMグループ(エールフランス航空、KLM航空、トランサヴィア航空、オップ!、Joon)
この各グループには格安航空も名を連ねている。これは格安航空の両雄ライアン航空とイージジェットに利用客を奪われないための手段である。
業界の風雲児であるライアン航空のマイケル・オレアリー社長は、最近こうしたことをよく口にするという。
「これから5年先には、(ヨーロッパの航空業界は)4つか5つのグループに集約されるようになる」
「ライアン航空、ルフトハンザ、エールフランス・KLM、IAG、それに恐らくイージージェットだろう」
欧州において、一般航空と格安航空の壁が無くなる日もそう遠くないのかもしれない。(参照:「
El Independiente」)
<文/白石和幸 photo by
Aero Icarus via flickr (CC BY-SA 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身