閉店続く「北レス」。まだ3店舗残るタイ・バンコクの北レスに行ってみたが……
この閑散とした雰囲気に、なんとなく察してはいたものの女性店員に「ステージショーはないの?」と聞いてみた。すると、案の定「ない」との返答。「バケーションでスタッフがいないから、来月からやる」とのこと。まあ、これは嘘だろうと思われる。何しろ、北レスの女性スタッフは、ボランティアの勤労奉仕で丁稚奉公に近い。休みは、生理休みが月1、2日程度のほぼ無休に近いという労働条件なのだ。
ただ、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕日)など北朝鮮の祝日は休みとなり、そのときに集団で旅行したり、ショッピングをしてることが多いが、記者が行ったときはそうした休みの日程とは重ならないのだ。
「タイの連絡先を教えてくれればショーが始まったら電話で伝えますよ」と、思いの外サービス心のある言葉が来たと思ったが、東京から来てタイに住んでいないからと答えると、あらそうとばかりの醒めた対応に戻ってしまった。
さらに、ステージョーがないなら「モランボン楽団」の曲名を伝えて流してくれとリクエストするも即答でないと瞬殺される始末。加えて、冷麺が登場したので写真を撮ろうとすると、撮影は全面NGだと速攻で指導された。記者は個人的に中国その他いろいろな地域の北レスに行ったり、行った人の話も聞いているが、女性スタッフを撮ってはいけないという店はあるが、全面NGなんて北レスはあまり聞いたことがない。
スマホで撮影した画像は会計時に削除させられたが、デジカメでも撮影できたのでなんとか記事で披露できている。
会計自体も一悶着あった。入り口にクレジットカードOKとあったので、クレジットカード払いを希望して渡すとカードが認識しないと返されてしまったのだ。別カードや中国の銀連カードも出すも全滅だった。スタッフ不在といいこれも制裁強化の何かしらの影響なのかもしれない。
ちなみに、もう3店のうち、もう一つのマイナー店と言える「平壌玉流レストラン」は、BTSエカマイ駅から徒歩10分くらいのソイ4と6の間のホテル内にあったはずだがホテル自体が廃業しており閉店していた。後から知ったのだが、同店は6月ごろにホテル廃業とともに閉店し、9月上旬にはBTSアソーク(MRTスクンビット駅)から徒歩5分ほどのソイ25近くへ移転オープンを遂げていたようだ。
今回訪れた「平壌アリランレストラン」では、微笑みの国タイにあるにも関わらず、一切微笑みのない対応をされてしまった。
ただ、旗艦店である 平壌日の出館レストランでは、「AKB48」の「恋するフォーチュンクッキー」や「花*花」の「さよなら大好きな人」などを披露することもあり、ステージショーの時間も最長50分と北レス史上最強の本格的なショーを見ることできる(9月末時点での情報)。
まだタイには北レスは3店舗残されているが、うち1店舗は上記のような状況だ。しかも、周辺国では北レス閉店ラッシュが始まっている。金正男氏殺害事件で有名になったマレーシアの首都クアラルンプールの「高麗館」は8月ごろまでにひっそり閉店。9月末には、ベトナムの商都ホーチミン市の「平壌柳京レストラン」も閉店している(ベトナムは首都ハノイの2店舗を除き北レスは閉店)。
バンコクの北レスにも、この閉店の波は押し寄せてくるかもしれない。
<取材・文・撮影/中野鷹(TwitterID=@you_nakano2017)>
店内撮影一切NG!
周辺国に押し寄せる閉店の波
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017
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