【10.22総選挙】6つの選挙が重なる被災地・宮城県南三陸町。「復興事業は争点になるか」の不安も

津波被害のモニュメント:戸倉公民館

 地域の方々に話を聞いて情報収集するべく、南三陸町内の公民館を探すことにした。検索すると中心市街地に最も近い志津川公民館は津波で流されてしまったようなので、その次に近い戸倉公民館に向かったのだが、どうも様子がおかしい。地元住民ではなく、観光バスが公民館に集まっているのだ。  海岸沿いの津波で洗われた広大な更地を数多くのトラックやショベルカーなどが行き来している戸倉地区。ほとんど歩道が整備されていない道を行き、たどり着いた公民館には観光バスが止まっており、団体客が説明を受けている。  待機していた観光バスの運転手とガイドの方に聞くと「この場所は20メートル近い高台に位置しているにもかかわらず、津波被害で3人が犠牲になった戸倉中学校があった場所。震災を象徴するモニュメントのひとつとして観光ツアーに組み込まれています。」という。 「震災後は校庭に応急仮設住宅が67棟建設されたのですが、復興住宅に移動が進んだ現在は5世帯が残るのみです」(前出の観光バス運転手)
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戸倉公民館から望む南三陸の海岸。被災を経験した語り部によるガイドに京都から訪れた観光客が耳を傾ける

 現地で被災した方々によって語り継がれている、震災を象徴する場所の一つとして機能していた戸倉公民館。近隣の高齢者やサークルが集まって囲碁やコーラスをして交流している公民館のイメージとは大きく異なった。
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5世帯残る仮設住宅の集会所隣に設置されている宮城県知事選ポスター掲示板

1mの差で津波被害を免れた喫茶店:珈琲神社

 三陸海岸を通る国道45沿いにぽつんと位置しているのが「まずいコーヒー屋」、「やばいコーヒー屋」という看板を掲げたクセのありそうな喫茶店、珈琲神社だ。中に入ると、クセのある外観に反して、オーシャンビューのテラス席が設けられ、こだわりの自家焙煎ブレンドコーヒーがウリの気持ちの良い空間だ。 「東日本大震災で襲った津波があと1m高くまで到達していたらこのお店も流されていたところでした。ぼくはこの街で生まれ育ったけど、おそらくこの先全国の人口減少地域に広がってゆくであろうBRT路線の社会実験に地元が利用されていることは、やっぱり違和感あるね。復興事業を進めるにあたっての合意形成の仕方とか、もっと話し合うべきだったよ。今度の選挙でそのあたりも争点になるのかな」(珈琲神社店主)
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「珈琲神社」では海を望みながら店主がドリップするコーヒー(600円~)のほか、ピザなどの軽食も味わえる

 ローカルアベノミクスとも呼ばれる地方創生を進めてきた安倍政権が民主党から政権を奪還して5年が経過する。政治は地方に何をもたらしてきたのか。そして地方は政治に何を期待するのか。  289小選挙区・11比例ブロックに分かれた、各地域の事情を背負う候補者による議席争いがまもなく始まる。 <文・写真:宮原ジェフリー(選挙ウォッチャー)>
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