【10.22総選挙】6つの選挙が重なる被災地・宮城県南三陸町。「復興事業は争点になるか」の不安も

 こんにちは、選挙ウォッチャーの宮原ジェフリーです。  突然に決まった衆議院の解散とそれに伴う総選挙で日本列島に激震が走っている。今回の選挙では一票の格差是正のため、小選挙区が全国で6減っただけでなく、区割りも細かく変更されており、該当する選挙区の各陣営は対応に追われている。  安倍晋三総理は記者会見でこの解散を「国難突破解散」と位置づけ、朝鮮半島情勢の緊張への対応と、少子高齢化が進み社会保障制度の安定化を問うと述べたが、現代日本が抱える問題はそれだけではない。例えば’11年3月に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県では6年半が経過した現在でも原発事故からの復旧や津波で流された地域の再建など復興の途にあり、それに伴う政治的な課題も少なくない。  被災地の中でも10月22日に投開票が行われる衆院選(小選挙区・比例代表)及び最高裁判官国民審査に加え、県知事選、町長選、町議選と実に6つの選挙が重なる町、宮城県南三陸町の現状を訪ねた。

被災地・南三陸町の現状と選挙

 南三陸町役場の最寄り駅であるベイサイドアリーナ駅はJR東日本気仙沼線に位置する。気仙沼線は震災の影響で、電車ではなくBRT(バス高速輸送システム)と呼ばれるバス路線として運用されている。
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気仙沼線BRT。線路を舗装してバス専用路線にしている

 復興も道半ばといった様子の街並みを進むと、突然多摩ニュータウンと見紛うほどの都会的な建築群が立ち現れる。南三陸町役場と復興住宅である。この庁舎は復興交付金21億円以上が投入されて再建され、2017年9月に完成したばかりだ。
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新築された南三陸町役場

 町役場で選挙管理を担当する高橋一清総務課長に話を聞いた。 「6つの選挙が重なっていることで、人員や備品の確保に追われているのが現状。ですが、それ以上に災害復興住宅が整備されたこの4年で多くの住民が県内外から南三陸町に移住しています。投票所入場券の発送まではその方々の名簿作成に注力しているところです」  国政選挙の状況に目を向けると、小選挙区の区割り変更の対象となっているここ南三陸町は、宮城6区から5区に変更となった。6区は現職の防衛大臣である小野寺五典氏(自民党・当選6回)の強固な地盤があり、また5区は元財務大臣の安住淳氏(民進党→無所属・当選7回)が、小選挙区制導入の’96年以降7期連続で当選を重ねている選挙区である。  町内に掲示されている安住氏のポスターには「南三陸町のみなさま、安住淳です。」、自民党から立候補を予定している勝沼栄明氏のポスターには「お世話になります。『かつぬま』です。」と、普段の政治家のポスターではあまり見かけない温度感の文言が記載されており、両陣営とも住民へのアピールに腐心している様子がうかがい知れる。
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勝沼氏は前回選挙で安住氏に敗れ、復活当選している

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観光ツアーに組み込まれた津波被害地
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