Googleが出資する月探査レース「GLXP」が佳境に! 日本も参戦、勝つのはどこだ?

迫る期限、しかしどのチームも月に行けず!?

 この5チームは、資金面ではスポンサーや投資家が集まり、技術面でも宇宙企業や大学などの専門家が参加するなどし、いくつかの困難はあれど順調に開発を続けてきた。現時点で各チームとも、打ち上げに向けた最後の開発や試験の段階にあるという(もっとも、どのチームもあまり詳しいことは明らかにしていないので、実際のところがどうかはわからない)。  しかしここにきて、すべてのチームが、月探査機を造ることはできても、それを月まで打ち上げるロケットがない、という問題に襲われている。  この5チームのうち、まずスペースILは、技術力や資金力などから最も優勝に近いと目されていた。  しかし、探査機を打ち上げるロケットに、米国スペースXの「ファルコン9」を選び、契約したまではよかったものの、ファルコン9の打ち上げ計画が遅れに遅れ、肝心の打ち上げ時期が2019年ごろ、つまりGLXPの期限よりはるかあとになる見通しとなっている。

スペースILが開発中の月探査機の想像図 Image Credit: SpaceIL

 ムーン・エクスプレスもまた、資金も技術もあるものの、こちらもロケットに問題を抱えている。同チームが使うのは、オーストラリアのロケット・ラボという企業が開発している「エレクトロン」というロケットだが、まだ一度も打ち上げに成功したことがなく、期限までに一度でも打ち上げが成功し、その上で、月へ向けて探査機を打ち上げるという、さらに難しいミッションを成功させられるのかは未知数である。  シナジー・ムーンもまた同様で、打ち上げには米国のインターオービタル・システムズという会社が開発中の「ネプチューン」というロケットを使う予定だが、このロケットも一度も飛んだことすらない。  もちろん月まで探査機を飛ばすことができ、なおかつ実績もあるロケットは数多くあるが、その大半は100億円前後と高価である。スポンサーや投資家による資金援助、そして20億円という賞金が頼みの綱の各チームにとって支払いは難しく、実績のない(その代わり安い)ベンチャーのロケットに頼るしかないのは致し方ないところではある。

ムーン・エクスプレスが開発中の月探査機の想像図 Image Credit: Moon Express

最有力だったインドと日本のチームを襲った悲劇

 こうした中、チームインダスとHAKUTOは共に、インドの国の宇宙機関であるISROが運用する「PSLV」というロケットに載って、来年3月6日に月へ向けて打ち上げることを計画している。  PSLVは1993年から運用が始まり、現在までに41機が打ち上げら、2008年にはISROの月探査機を月へ打ち上げた実績ももつ。つまり信頼性も実績も折り紙つきで、なおかつ比較的安価でもある。他のチームがロケット選びで苦労する中、とにもかくにも月までは行けそうという点で、両者は一躍、最有力チームになった。  ところが、打ち上げ予定日、そしてGLXPの期限でもある来年3月まで約半年と迫った今年8月31日、PSLVが打ち上げに失敗する事故が発生。ロケットは飛行停止となり、これ以降の打ち上げは無期限で延期となった。  もっとも、原因調査や対策は比較的早く進んでいるようで、インドのメディアでは「今年11月か12月にも打ち上げが再開される」という話が流れている。ただ、それでも当初の打ち上げ予定から数か月遅れることは避けられず、またチームインダスとHAKUTOの月探査機より前に打ち上げを予定している衛星もあることなどから、GLXPの期限までに両チームが月へ飛び立てるかは難しい状況になっている。  打ち上げ予定を前後させ、チームインダスとHAKUTOの月探査機を最優先で打ち上げることは可能かもしれないが、当然ながら他の人工衛星にも、それぞれに企業や研究機関の都合や事情があるため、GLXPの期限があるからといって特別扱いすることは難しいだろう。  いっぽう、GLXP側からは、今のところ期限の延長するなどの考えは出されていない。そもそも、2007年にGLXPが始まったころの当初の計画から数えると、もう何度も延長が繰り返されており、今年8月に「これ以上の延長はない」とした上で、現在の2018年3月31日という日にちが、新たな、そして最後の期限として設定されたという経緯があるため、さらなる延長は考えにくい。

チームインダスが開発中の月探査機と月探査車の模型 Image Credit: TeamIndus

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見切りをつけるチームも……
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