JAXAが公開した気候変動観測衛星「しきさい」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2017年9月14日、筑波宇宙センター(茨城県つくば市)において、気候変動観測衛星「しきさい」を公開した。打ち上げは今年度中の予定で、昨今大きな問題となっている地球の気候変動(地球温暖化)のメカニズムを解明し、人類と地球の未来を守るためのミッションに挑む。
近年、なにかと話題になる気候変動(地球温暖化)問題。世界各地で干ばつや洪水など、気候変動が原因とも考えられている異常気象が起こるいっぽうで、米国のドナルド・トランプ大統領が、気候変動の抑制を目指した国際的な協定「パリ協定」からの離脱を表明するなど、その将来は不透明な状況にある。
最新の予測では、21世紀末の地球の平均気温は、現在と比べ2.6~4.8度Cほど上昇するとされる。過去100年間での上昇気温は0.8度Cほどであり、2.6度C以上もの上昇はとても大きい。
また、予測に2.6~4.8度Cという、約2度Cもの誤差があることも大きな問題となっている。
なぜ、これほど大きな誤差が出るのかといえば、予測に使うデータが不十分であることがある。気候変動には、二酸化炭素やメタンなど、いわゆる「温室効果ガス」の影響のほかに、地球の雲や雪氷、植物、大気中の微粒子「エアロゾル」といったものも影響をもっている。
とくに植物は温室効果ガスのひとつである二酸化炭素を吸収するが、どれくらい吸収しているのかは十分なデータがない。エアロゾルは太陽光を反射して地球を冷却させる効果をもつが、こちらもその量や、どれくらい冷却する作用があるのかというデータが少ない。その結果、研究によって、これからの温暖化の度合いに誤差が生じてしまっているのである。
これほどにまで大きな誤差があると、では実際これからどれくらい気温が上がるのか、そして今後どうすれば気候変動を抑制できるのかという対策を考えることも実施することも難しくなる。
地球の気温がこれからどうなるかを正確に予測するためには、植物がどれくらい二酸化炭素を吸収しているのか、エアロゾルがどれくらい冷却する効果を果たしているのかなどの、詳しいデータが必要になる。
その課題に挑むのが、日本が開発した気候変動観測衛星「しきさい」である。