「宇都宮ライトレール」まもなく着工!-日本初の「新設LRT」、その計画概要は?
2017.09.26
東側区間の総工費は約458億円で、単年度収入予想によると開業2年目から黒字となり、開業9年目には累計収支も黒字に転換する見通しだ。
もともと、宇都宮市におけるLRT構想の発端は1993年のこと。渋滞の深刻化により工業団地へのアクセス改善を求める声が高まったことによる。それ以降、宇都宮市と栃木県が共同でLRT導入への研究を進めていたものの、2003年に財政再建を優先した福田昭夫栃木県知事(当時)の判断で一度は計画中止となった。
2004年に「LRT推進派」である現在の福田富一栃木県知事、佐藤栄一宇都宮市長が就任すると、再びLRT導入への議論が活発化したが、採算性を疑問視する反対派の声などもあり、国土交通省にLRT計画が認定されたのは就任から12年経った2016年9月。その時点では、優先整備区間である東側区間は2019年12月の開業が予定されていたものの、国交省に提出する工事施行認可作成の遅れなどから、着工は2017年度末の、開業は2022年3月の予定へと、大幅にずれ込んでしまった。
今回着工されるJR宇都宮駅から東側の区間における最大の整備目的は、沿線に立地する工業団地への通勤環境の改善だ。
鬼怒川の東側には内陸型工業団地としては国内最大級の「清原工業団地」(宇都宮市)や宇都宮テクノポリス(宇都宮市)、ホンダの工場・研究施設が集積する「芳賀工業団地」(芳賀町)などが立地するほか、国道4号線バイパスと交差する平出地区には宇都宮工業団地(平出工業団地、宇都宮市)もある。宇都宮都市圏では長年に亘ってこれらの工業団地への交通渋滞が問題となっており、工業団地の拡張のたびに渋滞は深刻化していた。LRTは、こうした状況の改善に大きな効果をもたらすものとして期待されている。
さらに、沿線にはショッピングセンター、温浴施設、病院、大学など様々な大型施設があり、通勤輸送のみに留まらない、日常生活の様々な場面においても重要な路線としても活躍することになる。
また、LRTが通らない近隣の住宅地などの交通環境もLRTの整備によって大きく改善することになる。
大型ショッピングセンター前に設置される「ベルモール前停留所」など、拠点性の高い一部のLRT停留所には、ターミナル機能を備えた交通結節点「トランジットセンター」を設け、さらにLRT路線の周辺には路線バスや地域内交通、デマンドタクシー(予約型乗合タクシー)といった公共交通網を張り巡らせて、それらを「トランジットセンター」に直結。これにより、バスなどの公共交通、自家用車、自転車など、あらゆる交通機関からLRTへのスムーズな乗り換えをおこなうことが可能となり、JR宇都宮駅や中心市街地への交通アクセスも改善されることになる。
実は、LRTの沿線となる住宅街、ニュータウン地域でも少子高齢化の波は少しずつ訪れており、工業地帯であり宇都宮市のベッドタウンでもある芳賀町でさえも、1990年代より人口が減少しはじめている。
宇都宮市と芳賀町は、このようにLRTが街の軸となることによって、自家用車の有無にかかわらず「誰もが安心して移動できるコンパクトシティ」を実現し、迫り来る人口減社会や高齢化の波に対応したい考えだ。
「工業団地への通勤環境の改善」と「コンパクトなまちづくり」にかける期待
※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中
・ダイエー60周年で創業祭、9月23日から開催-三宮で記念式典、「モッくん」も復活
・千葉ポートタウン、ラオックス主導の「体験型施設」に-インバウンド狙い「サバゲー」や「カップ麺専門店」も
・ビックカメラAKIBA、6月22日グランドオープン-「AKIBAビックマップ」形成へ
・高島屋羽田空港店、5月25日閉店-大丸も8月27日閉店、伊勢丹が制した羽田空港の百貨店競争
ハッシュタグ