「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録は、加計問題と同じ“お友達案件”だった!?
6月23日、日本記者クラブで会見し、加計学園問題について告発した前川氏
この「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録は、第1次安倍内閣の頃から動き始めた。これに関して前川氏は「(加計問題と同様に)かなり無理筋の“お友達案件”でした」と振り返る。
「地方の首長が『地域振興だ』として協議会をつくって取り組んでいたのですが、それをまとめてユネスコに働きかけようとしていた中心人物が加藤康子(こうこ)さん。加藤六月元農相の長女です。安倍家と加藤家は仲が良く、康子さんは安倍首相の幼なじみだそうです」(前川氏)
第2次安倍内閣で康子氏は内閣官房参与となり、文科省の3年先輩で元ユネスコ大使の木曽功氏も同じく内閣官房参与だった。現在、加計学園「千葉科学大学」学長の木曽氏は、和泉氏と同様、加計問題にも登場する(事務次官時代の前川氏を訪ねて獣医学部新設について面談)。加計問題と世界遺産登録問題は、人脈的に重なり合う。「文科省が抑え込まれた」ということも加計問題と瓜二つだ。
文化庁が推していた「長崎の教会群」を逆転、政治判断で決定
世界遺産登録決定の内幕を語る前川氏
世界遺産はユネスコの諮問機関であるイコモスが審査するが、各国の文化遺産の推薦枠は年間1件。文科省外局の文化庁文化審議会は、2015年の推薦枠として長崎の教会群を考えていた。
この年は長崎での信徒再発見から150年目。幕末の開国で禁教が解かれ、フランス人の宣教師が長崎に教会を作った1865年、カトリック世界で日本の隠れキリシタンが大きなニュースとなった。そこで、長崎県の関係者は「150年目の年に教会群を世界遺産登録したい」と準備を進め、文化審議会も「長崎教会群推薦」という結論となった。
当時「明治日本の産業革命遺産」も候補のリストに入っていたが、その順位は低かった。安倍首相の地元・山口県の松下村塾と八幡製鉄所(福岡県)や軍艦島との関連性が説明しにくいこととに加え、軍艦島の保全措置が取られていないという大きな問題もあった。
そのため、文化審議会では「保全措置が不十分な限りは、日本政府から推薦できる案件にならないのではないか」という慎重論が大方を占め、長崎の教会群より順位が下になっていたのだ(現在も軍艦島は保全措置が取られていないため、日々壊れゆく状態になっている)。
「ところが内閣官房が文化審議会とは別の有識者会議を設けて審査し、『明治日本の産業革命遺産にする』と言ってきました。政府の中に、文科省外局の文化庁の『文化審議会』と内閣官房の『有識者会議』という二つの審査機関ができていたのです。
最後は政治判断となり、『明治日本の産業革命遺産』が選ばれました。順位が低かったにもかかわらず、加藤康子氏や内閣官房が強く推していたほうに決まったわけですから、こちらでも“総理のご意向”があったのではないかという疑問が出てきます」(前川氏)
<取材・文・撮影/横田 一>
よこたはじめ●ジャーナリスト。著書に『
新潟県知事選では、どうして大逆転がおこったのか』(七つ森書館)『
検証・小池都政』(緑風出版)など