バンコクで日本人に大人気の焼き鳥店は、なぜタイ人向けの居酒屋でも成功したか?

「客単価でいえば、例えば鳥波多゛が1000バーツ(約3000円)くらいとすれば、佐助はその半分です。鳥波多゛と同じメニューもありますが、タイ人向けにやや値段を下げています。だから客単価が安くなるというのもありますが、タイのお客様はシビアに料金を見ていますね。日本酒だと小瓶のものが人気ですが、量と価格をよく見て判断されているようです」(タイ鳥波多゛グループ全体のメニュー考案と調理も担当する川上海氏)  河上氏は、佐助の厨房から見たタイ人客は意外と冷静な目で価格を見ていると分析する。  これはそこそこに給料はもらっているが、だからといってタイの平均的物価感覚もしっかりあるという、中流階層にいるヤングエグゼクティブっぽい若手たちの特徴でもある。

しっかりした内装の割に低価格で心を掴む

佐助店内

タイはインテリアなどに関してレトロブームが興っており、日本の古き良き時代をイメージした内装もウケがいい

 タイの所得格差は著しく、富裕層は屋台には来ないし、低所得者層も高級店には来ない。しかし、中流層の20代30代は好奇心旺盛で、そこそこの料金設定であれば支払い能力もある。また、SNSの発展などで、この層は行動範囲も広くなっているので、流行に敏感なのも特長だ。そのため、和食ブームの中、和風の内装を施した同店は関心をもたれやすい。しかも、佐助のように和風な内装にした中流層向け飲食店であれば和食ブームのタイでは富裕層も入りやすい。現にタイの芸能人などもときどき訪れているという。 「今後はタイ人に突き刺さるメニューを考案していきたいですね」  河上氏としてはこれまで日本人向けのメニュー考案が主な仕事だったが、これからはタイ人にも喜ばれるネタを考えなければならない。河上氏曰く「鳥波多゛グループをタイに浸透させていきたい」という目標を掲げる場合、佐助のようにタイ人をターゲットにして展開していくのは至極当然の流れなのかもしれない。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)取材協力/居酒屋 佐助
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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