1日の再配達のうち2万件は「居留守」が原因! 置き配や宅配ボックスをどう活用していくか

アメリカで実施されている「アマゾンロッカー」は返品もロッカーから可能

 もう1つ、不在時の配達方法として、ここ10年で確立されてきたのが「宅配ボックス」だ。  置き配に起こり得るようなリスクが低く、24時間受取りが可能であるため、最近の新築マンションにはかなりの割合で設置されるようになった。しかし、集合住宅の場合、保管できる荷物の数に限りがあることや、長時間使用されていて全く空きが出ない、住人がロッカー代わりに使用することで宅配業者が利用できない、などといった問題が解消されず、中には朝の宅配で業者同士「ボックスの取り合い」が起きるところもあるという。クール便には対応できないことも弱点としては大きく、そうなれば不在時の配達には、やはり「再配達」の可能性は払拭できない。  そんな中、近頃都市部を中心に増えてきたのが、居住敷地外の宅配ロッカーだ。暗証番号で開錠できるロッカーが駅やスーパーなどに置かれ始め、仕事帰りや買い物ついでに荷物を受け取れるようになってきている。しかし、やはりクール便には対応できない他、利用できる宅配業者や通販企業に縛りがあったり、地方には全く浸透していなかったりなど、まだまだ改善すべき点が多い。  一方、アメリカの一部の州ではAmazonが「Amazon locker」なる宅配ロッカーをショッピングセンターやフィットネスクラブの中に設置し、同社で購入したものを日常生活の動線上で受け取れるようになっている。返品もロッカーでできるため、利用者の満足度は高い。さらに最近同社は「Amazon Hub」という、同社以外の商品や荷物にも対応したロッカーの展開を発表し、話題を呼んだ。日本で言う、いわゆる集合住宅やオフィスの「宅配ボックス」に近いものだが、モジュール式になっており、ニーズに合った数量を後付けできることで古いマンションなどにも簡単に設置が可能となるため、今後多くの需要が見込まれている。日本での展開は未定とのことだ。  宅配便のサービスが開始されて40年が経過する一方、買い物方法はこの10年で大きな変化を遂げている。  今後、高齢化社会が加速すれば、ますます在宅ショッピングの需要は高まるだろう。さすれば余計に新しい配達方法に期待する反面、未解決のリスクや提携会社によるサービスのばらつきが、その普及を妨げる要因になっているもったいなさを感じてしまう。垣根をできる限り低くし、統一したサービスを提供できるよう、企業間で取り組むことが、やはり何よりも急務である。  新しい受取り方法には、受取側に若干の手間がかかることもあるだろう。しかし、受け取れないことが分かっているのならば、「再配達」ではなく、こうした新しいサービスをうまく利用してほしい。きっとその手間は、ドライバーには最高の「神助け」になるはずだ。 【橋本愛喜】 フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。その傍ら日本語教育やセミナーを通じて、60か国3,500人以上の外国人駐在員や留学生と交流を持つ。ニューヨーク在住。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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