NECが公開した高性能小型衛星「ASNARO-2」、 ICTとの組み合わせで世界と勝負

ASNARO-1の実物大模型

2014年に打ち上げられたASNARO-1の実物大模型。NEXTARの部分はASNARO-2と同じなものの、先端には光学センサー(望遠鏡のような部分)がついている

他国の小型衛星と比べての強みは?

 NECや開発を支援した経済産業省は、このASNAROを他国、とくに新興国に輸出することを狙っている。  ASNAROのような地表を観測できる衛星は、農作物の生育状況の把握や、資源探査、環境破壊や違法伐採などの監視、防災や減災など、さまざまな利用に役立つ。それは国土の大小にかかわらず、あらゆる国にとって役立つものではあるものの、一方で新興国などは、衛星を造ったり運用したりする技術をもっていないところが多い。そこでASNAROのような衛星の輸出に需要が生まれる。  しかし、ASNAROのような数百kgほどの小型衛星というのは、世界的には珍しいものではない、すでに英国のサリー・サテライト・テクノロジー(SSTL)や、韓国のサトレック・アイといった企業が開発、販売しており、他国への輸出も行っている。その点では、ASNAROは後発にあたる。  NECは、こうした他国の衛星と比べ、ASNAROは実績や価格面では敵わないと認める一方で、高性能さと柔軟性を強みにしたいと語る。  たとえばASNAROは、他国の同クラスの衛星と比べ、より細かいものを、高画質で撮影することができるため、多少価格が高くても、その性能を欲しがるところがあるという。  また、前述したNEXTARによる柔軟性の高さも合わせることで、「高性能な衛星がすぐに欲しい」という要求にも応えられる点も強みになるという。
ASNARO-2の模型

ASNARO-2の模型。先端の合成開口レーダーのアンテナは宇宙空間で展開する

電機メーカーならではの強みも

 ASNAROの、そしてNECのもうひとつの強みとして、ただ衛星を開発、販売するだけでなく、その衛星が取得したデータの処理や分析を行い、そのデータやノウハウを販売できる、ということがあるという。  衛星を導入したい顧客、とくに新興国などは、その衛星が取得したデータをどのように利用、活用すればいいのかというノウハウをもっていないことが多い。実際にNECが海外で市場調査したところ、「衛星は欲しいが、そのデータをどう使えばいいのかわらない」といった声が多く聞かれたという。  世界の衛星メーカーの多くは、いわゆる重工系であり、衛星そのものを開発、製造することは得意であっても、データの利用などは不得手なところが多いという。  NECもこれまでは、衛星を製造して顧客に提供する、というところまでしかやっていなかったが、このASNAROからは衛星の運用も担当し、そして顧客からの注文に応じ、衛星が撮影したデータを提供するまでをトータルで行うという。  さらに将来的には、データの利用、活用の支援などを含む、総合的なソリューションとして提供していくことも考えているという。NECが情報や通信にかかわる研究や開発、販売といった、いわゆる「ICT」に長けたメーカーであることいかした強みとなる。  これから小型衛星による地球観測がさらに活発になれば、データが集まる頻度はリアルタイムに近くなり、いわゆるビッグデータ化する。そのデータを適切に処理、分析できれば、これまでにないビジネスモデルが構築できる。  NECではその一例として、「たとえばスーパーマーケットの駐車場にどれくらい車が入っているかがわかれば、投資家の株式投資の役に立つ。あるいは石油リグを上空から見れば、どれくらいの稼働状況で、石油がどれくらい出ているかがある程度わかるので、先物取引にも役立つ」と挙げた。
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明日は「ヒノキ」になれるか?
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