NECが公開した高性能小型衛星「ASNARO-2」、 ICTとの組み合わせで世界と勝負

合成開口レーダーのアンテナ

衛星の先端(上部)に見える白い部分が合成開口レーダーのアンテナ。ロケットに積みやすくするために折りたたまれており、宇宙空間で開く

衛星本体の共通化により、低コスト化・短納期化を実現

 ASNAROのもうひとつの大きな特長は、衛星の基本的な機能をもった部分を共通化し、そこに目的(ミッション)に応じた機器を自由に装着できるようにしているところにある。  従来の衛星は、ミッションごとに一から設計、開発されることが多く、そのためコストが高く、納期も長くなる要因になっていた。  そこでASNAROは、太陽電池やバッテリー、コンピューター、姿勢を制御する機構など、衛星にとって基本的な機能をもった筐体を造り、そこにミッションに応じてカメラをつけたり、レーダーをつけたりできるようにした、「NEXTAR」(ネクスター)を開発した。  衛星のミッションは違っても、NEXTARの部分は同じなので、NEXTARを大量生産することによる低コスト化や信頼性の向上が期待でき、またミッションごとの機器はあらかじめ開発済みのNEXTARに後付けすることになるので、短納期化も期待できる。
NEXTARのイメージ

NEXTARのイメージ。NEXTAR部分は共通化しつつ、そこにつける機器を変えることで、手軽に多種多様な衛星を造ることができる Image Credit: NEC

 そしてASNAROがNEXTARの最初の採用例となり、NEXTARに光学センサーを搭載したASNARO-1と、今回の合成開口レーダーを搭載したASNARO-2が開発された。そのため両者を比べると、衛星の後ろ半分のNEXTARの部分は姿かたちがほとんど同じで、一方で前半分の部分はまったく異なっていることがよくわかる。  今後もNEXTARに光学センサーや合成開口レーダーを積んだASNAROのような衛星はもちろん、通信機器など他の機器を積んだNEXTAR衛星も、続々と製造されることになるかもしれない。  さらにNEXTARとミッション機器との結合部分の仕様や、通信や電力のやり取りに使う規格なども標準化が図られているため、他のメーカーがミッション機器だけを製造し、それをNECに持ち込んでNEXTARと合体させ、ひとつの衛星を造り上げる、ということもできる。ちなみに、ASNARO-2の合成開口レーダーも、NECではなく三菱電機が開発しており、実際にその能力が発揮されている。
次のページ 
今後は輸出も視野に
1
2
3
4