当番弁護士を呼ぶ方法は、至って簡単だ。警察署の取調室に連れ込まれた時、あるいは本格的に留置場に入れられた時など、明らかに自分の身柄が拘束されている状態で、そばにいる警察官に
「当番弁護士を呼んでください」
と言うだけだ。それだけで早ければその日の夜、遅くても翌日の夜には、弁護士会から派遣された当番弁護士が接見に来てくれる。
また痴漢冤罪対策として、取調室に連れ込まれた時点で、
「弁護士と会うまで何も話しません」
と“黙秘宣言”する場合もある。警察はすぐに当番弁護士を呼んでくれるだろう。
ちなみに当番弁護士を呼べるのは、あくまで逮捕などで“身柄が拘束されている状態”だけだ。痴漢の容疑をかけられたものの、逮捕を免れて最初から在宅捜査になった場合は、当番弁護士は呼べないので注意しよう。
法廷系のドラマや小説が好きな人なら、名前くらいは知っているのが“国選弁護人”だ。日本の裁判システムは、刑事事件で法知識のない被告人を守るため、裁判で必ず弁護人が必要な“必要的弁護事件”というモノがある。しかし、実際に全ての被告人が弁護士を雇える金を持っているわけではない。
そうした経済的な理由で弁護士を雇えない被告人に対して、国が弁護費用を出すことによって、被告人の弁護人となった弁護士が国選弁護人だ。したがって国選弁護人を雇った場合、被告人自身が支払う弁護士費用は、基本的にゼロである。
ただし、国選弁護人を雇うには、経済的に困窮していることが第一条件である。具体的には、預貯金や可処分財産(車などすぐ売却可能な資産)の合計が、50万円未満でなければ国選弁護人の選任を依頼しても却下される。もっとも自分の資産は、あくまで自己申告である上、国選弁護人を選任する役目を持っている裁判所は、いちいち資産を調査することはない。
だから本当はカネを持っていても、国選弁護人を使うことは不可能ではないのだが、身も蓋もない話をすれば、大嘘をついてまで国選弁護人を雇う価値はない。なぜなら国選弁護人に“当たりハズレ”が大きいというデメリットがあるのだ。これは国が支払う国選弁護人の弁護費用が、非常に安いことが原因である。
運よく腕もやる気もある弁護士が当たればいいが、腕もやる気もないハズレ弁護士に当たってしまうと最悪だ。国選弁護人を頼むタイミングは、逮捕後事件が警察から検察に移り、検察の検事が引き続き身柄拘束捜査が必要だとして、裁判所に勾留請求をすると行われる裁判所の勾留質問の時である。
つまり勾留質問の段階まで刑事手続きが進んでいるというわけで、痴漢事件でココまで行ってしまうのは、被疑者が容疑を否認している時が多いのだ。否認事件で頼りになるのは弁護士だけなのである。そんな弁護士頼みの状態で当たりかハズレかわからない国選弁護人を頼むという“賭け”はなかなかリスキーである。