ゾウも打ち上げられる大型ロケット「GSLV Mk-III」
インドが開発した大型ロケットGSLV Mk-III Image Credit: ISRO
「Mk-III」とつくと、なんとなくマイナー・チェンジな感じも受けるが、実際には、新型の大型固体ロケットを開発したり、エンジンを束ねて2倍のパワーを出せるようにしたりと、打ち上げ能力を大きく向上させるためさまざまな技術が投入され、これまで運用されていたGSLVとはまったく異なる機体になっている。
GSLV Mk-IIIは、4トンの静止衛星を打ち上げられる能力をもつ。従来のGSLVの打ち上げ能力は約2トンだったので、単純に2倍になった。ちなみに4トンというと、大人のインドゾウとほぼ同じ重さなので、インドのメディアでは「インドゾウも打ち上げられるようになった」と表現されることもある。
もっとも世界には7トンの静止衛星を打ち上げられるロケットもあるので、4トンという数字はそれほど大きなものではない。しかし放送・通信衛星には3~4トンのものも多いので、ほぼ十分な能力といえよう。
GSLV Mk-IIIの開発において、とくにインドが力を入れ、そして困難をきわめたのは、衛星を最終的に軌道へと送り込む第3段エンジン「CE-20」の開発である。
このエンジンは液体酸素と液体水素を燃やして動くエンジンで、高い性能が期待できるものの、開発と運用はきわめて難しい。とはいえ、米ソは1960年代に、欧州や日本、中国も1980年代までには実用化しており、インドにとっては是が非でも手に入れたい技術でもあった。
インドはもともと、このエンジンの技術をロシアを通じて手に入れる計画だった。実際に完成品のエンジンが輸入され、宇宙を飛んでもいる。その後インドは、ロシアから技術導入を受け、まず輸入していたエンジンを国産化し、そしてゆくゆくはより性能のよいエンジンを自力で開発しようとしていたが、米国からミサイル技術管理レジーム(MTCR)に抵触するという警告を受けたために頓挫。結局、最初から自力で開発せざるを得なくなった。そして10年以上の歳月をかけて完成させたのがCE-20である。
今回が初めての飛行となったCE-20だが、問題なく順調に動き、衛星をほぼ予定どおりの軌道に投入することに成功している。