「大きな組織に勤めていれば安泰」という時代の終わり
合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)という言葉がある。ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロ(集計量)の世界では、意図しない結果が生じてしまうことを言う。現代社会で働く人々が抱える闇だ。会社のためとはいえ、指示や目標に向かってしている仕事が、世の中を悪くする方向に加担してしまう矛盾。
そうしたことに気づいてしまったら、給料を貰うためとはいえども、辛く、切なく、虚しくなるのは当然だ。働く意義が見出せなくなっている人のほうがマトモなのである。限られた人生の大半を、望まない未来なんかに費やす仕事では、希望を描けない。
自分を養うとか家族を養うという目的以外にも、本来、人が働くためにはミッション(使命)とパッション(情熱)が不可欠。それを取り戻し、本当の働く喜びを獲得するにはどうしたらいいのだろうか。その答えの一つは、小さくなることである。「ありがとう」が聞こえる範囲で仕事するということだ。そうすれば加害の側面を直視できるし、それに目を伏せず対処できる。
「大きな組織に勤めていれば安泰」という時代の終わりが始まっている。誰のためにもならない仕事から、社会貢献できる仕事へ、自分自身の誇りを取り戻そう。次の時代を創るのは、今悩んでいるアナタなのだ。
そして、今いる会社から納得できないことを押しつけられたが故に見切りをつけるときには、ぜひ内部告発をしよう。会社に野暮ったがられても、世の中のためになるのだから。
<文/髙坂勝>
1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを12年前に開店。
『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar
「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO
「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に
『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。